ビジネスで学んだノウハウを陸上に導入

“新春の風物詩”箱根駅伝で見事2連覇を飾った青山学院大学。その圧倒的な強さに改めて驚いた視聴者も多かったことだろう。

その青学陸上競技部を率いるのは、原晋監督。“原マジック”と呼ばれる指導法は、陸上界の常識をことごとく打ち破ってきた。そんな原監督の“極意”を解き明かしているのが本書だ。といっても、これは単なる陸上競技に関する本ではない。ビジネス書でもあり、人生訓でもある書なのだ。

『魔法をかける アオガク「箱根駅伝」制覇までの4000日』原 晋著 講談社

広島県出身で、県立世羅高校から中京大学へ進み、大学3年時には学生インカレ5000mで3位入賞の実績を携え、中国電力に入社。陸上部創設メンバーとして迎え入れられたものの、監督の指導方針と折り合わず、衝突を繰り返す。しかも、故障が長引き、いい成績も収められない。そのまま、陸上部をクビになってしまう。

天国から地獄――。持て囃されていた環境はガラリと変わり、単なる一社員に風当たりは厳しかった。営業マンになったものの、そのまま腐っていたら本当に居場所は無くなってしまう。そんななか、先輩の一言で救われ、“伝説の営業マン”としての階段を上り始めることとなる。

背水の陣から会得したモノを売るメソッド。これこそが、青学陸上競技部の背骨にも組み込まれることとなる。失敗から学び、成功へ導く。ビジネスマンが日夜、体験から学習し、活かしているノウハウを陸上という分野に導入したのだ。