宗教オンチ日本が抱えるリスクとは

いま、中東のシリア・イラク地区におけるイスラム教スンニ派過激組織ISISの動きが国際社会の火種の一つになっている。日本人の犠牲者も出ているが、日本人にとっていま一つ分かりにくいのも事実だ。イスラム圏内における教義の違い、異教徒との戦いと捉えがちだが、ISISの動きは中東地区、イスラム教徒が置かれた経済的事情と密接に関連している。

『経済を読み解くための宗教史』宇山卓栄著 KADOKAWA

石油という資源を持つ国と持たざる国の間で経済格差が開き、産油国においてもオイルマネーの恩恵を受ける特権階級とその他大勢の国民の間で貧富の差が著しい。経済面での不満が、貧しい人々のISISへの加担を促している側面は見逃してはなるまい。先進諸国が産油国国内の不公平な構造を看過してきたことも、ISISの構成員を生みだした一因といえるのではないだろうか。

日本人が宗教を難しいものと考えがちなのは、確立された宗教観を持たない故のことといえるだろう。しかし、日本が鎖国政策でもとらない限り、政治・経済の両面でグローバル化の流れが止まることはない。そうであれば、宗教オンチであり続けることは、日本にとってマイナス要因でしかない。

歴史観についても同様で、日本が太平洋戦争に突入した背景事情などを詳しく学んだ上で反戦を唱えることが大事である。このような、情緒論にとどまらないアプローチが日本人に欠けているのではないかと感じられる。

一般的な受験勉強のごとく、単に史実を頭にインプットするだけではなく、史実の背景に存在した事情を踏まえてはじめて、歴史に学ぶ姿勢が確立すると考えられる。現在の国際情勢をより正確に理解するためには、国民性の基盤である宗教の理解を避けて通れないのもまた事実だろう。