突発的なミスをもカバーする緻密な区間配置

大方の予想では、青学大は1区にルーキーの鈴木塁人を配置するとされていたが、実際に出走したのは三大駅伝初出走の梶谷瑠哉(2年)。3区は登り調子だが直近まで不調に喘いでいた秋山雄飛(4年)。5区は“ポスト山の神野”を担う貞永隆佑(3年)。

彼らとセットになるのは2区一色恭志(4年)、4区森田歩希(2年)、6区小野田勇次(2年)。一色は押しも押されもせぬ青学大のエース、今季ブレイクした森田は全日本大学駅伝MVP、小野田は前回同区間2位のスペシャリスト。異なる特長を持つランナーが、不安要素が残る区間の“アンカー役”として控えていた。

フタを開ければ、1区梶谷は4位で発進し、トップの東洋大・服部弾馬(4年)から4秒差で繋ぐ殊勲の走り。出鼻をくじかれたライバルチームを尻目に、2区一色は区間3位と滑らかに継走する。原監督の檄(げき)で奮い立った3区秋山でトップへ。5区貞永はやや苦戦するも想定内。むしろ、最終盤のペースダウンを食い止め、迫りくる早大の追撃を33秒差で振り切った。6区小野田の滑走で再び大差へ。アンカー役によるリカバリーの必要が無いほど、理想的な形でレースは展開した。

7区は過去2大会連続区間賞の“駅伝男”田村和希(3年)。実績は十分だが、ここで“まさか”が起こる。終盤にさしかかるまで快調に飛ばしていたが、体調不良を訴え突如失速。区間11位に沈んだのだ。約2分あった差は1分20秒余りまで縮まった。穴のないオーダーを敷き、盤石と思われていた青学大の復路。思わぬところで生じたほころびに、すかさずアンカーが発動する。

8区の下田は、原監督の指示に対する応答もそこそこに、序盤からアクセルを踏む。一時は危険水域に入った2位の早大が、豆粒のようになっていく。圧倒的な力を見せた下田は早大との差を約5分半とし、勝利への決定打となった。全日本大学駅伝に続いて打倒・青学の急先鋒となった早大はこの区間14位とブレーキ。青学大が一瞬見せた隙に付け込むどころか、下田によるリカバリーの前に屈する事になった。

8区でくさびを打った青学大は、9区、10区と無難に襷を運び、大手町に帰還した。両腕を上げ、笑顔で選手たちの元に戻る原監督。反対に、ライバルチームの指揮官は歯がゆい思いで自校のゴールを見届けたのではないだろうか。