50人の女性の部下全員の姓名を暗記
2000年4月、キッチン、浴室、洗面化粧台、トイレといった住宅の水回りを改装する「リモデル事業」で、販売促進活動を展開するコンタクト営業推進室長に就いた。49歳になった直後だ。
リモデルは90年代前半、バブル経済の崩壊で新築住宅の伸びが頭打ちとなったのを受け、新たな成長分野として注力が始まった。同業他社の動きは鈍く、大きく先行する。販促の目玉は大ヒット商品「ウォシュレット」で、98年には発売以来の販売台数が1000万台を突破。2015年7月には4000万台に達した。
一方で、改築・改装の現場を担う工務店や水道工事店などを結集した「リモデルクラブ」を、全国で次々に誕生させる。クラブは加盟店の意欲を引き出すため、TOTOにしばられない制度とした。潜在需要を掘り起こし、リモデルクラブ店と連携するのはショールーム。家族で立ち寄りやすいように、従来の駅前型から郊外型へと変え、「全国に100カ所」の目標も掲げた。
コンタクト営業推進室長の内示を受けるまで、そんな熱気の外にいた。営業本部で販売目標を立て、前号で触れたように流通改革を進め、古くなった営業手法を刷新する販売改革に打ち込んでいた。いわばリモデル市場は、未知の世界。そこで、内示を受けると3カ月間、各種のデータを集め、若手とコンピューターで分析し、成長性を試算した。すると「これは、やらなければいけない事業」との答えが出る。併せて「カギとなるのはショールームとリモデルクラブだ」とみえた。展望がよく見通せれば、躊躇なく動く。