ビジネスの場面では、作家のような文章力はいらない。要点をまとめる論理力。数字を駆使した説得力。読み手の興味をかきたてるコピーライター的センス……。達人によるビフォーアフターで、「通る文書」のつくり方を身につけよう。
議事録は、単に議事のプロセスを記した筆記録とは違う。会議の目的と検討項目を明記し、そこで生じた意見・論点を経て最終的な意思決定に至るまでを「起承転結」でまとめたものだ。
議事録を作成する際は、本や雑誌のような「目次」という考え方を根底に持つといい。第1章、2章、第1部の1、2……という具合にまとめていくと、会議は整理しやすい。私は現場にいた頃、会議の前に自分で目次をつくっていた。各担当者に全体像を見せ、「この章はおまえ」「こっちの章はおまえ」という具合に振り分けて資料をつくらせるためだ。
議事録の最も大切な機能は、読み手が次のアクションを再確認できること、要は「次にこうしてほしい」という作成者の「意志」が伝わることである。そのポイントは読み手によって異なるから、議事録とは別に、見るポイントやサポートしてほしい部分をおのおのにメール等で示しておくといい。
逆に、仕事において機能させる自分の「意志」を養うのに議事録作成が役に立つ、という言い方も可能だ。会議をただ漫然とこなすのではなく、聞いた議論を整理して文字に起こす作業は、自分の知見を格段に広げてくれる。議論の最中に感じた気付きや疑問、違和感の蓄積が、絵空事でない自分の「意志」のベースとなるのだ。
自分の意志を持てるようになれば、議事録を戦略的に使うこともできる。自分で議事録を取る際、未決事項を明示しておくことができれば、本当は直接関連のない事柄でも後から関わることができる。管理職であれば、中途半端に終わった会議に自分なりの結論を付け、意志を上に伝えることも可能だ。
私が最も嫌いな組織とは、各自が自分の「意志」を持たず、決定を全部上に求めてくる組織だ。事前説明と称して言質を取り、「上がこう言ったから」と下に下ろしていくようでは、迅速な意思決定はできない。
部長なら部長、課長なら課長で、個々のメンバーが一つ一つの案件について、自分が決めなければならないことは何か、これは自分が決めることなのか、下が決めることなのか、それとも上が決めることなのかをきちんと整理できていれば、その組織はタイムリーに決断し、迅速に動く。そこでは、しっかりとした章立ての議事録が作成されているはずである。