アクセンチュア マネジング・ディレクターの市川博久氏との対談後編。若新氏たちの企画した「就活アウトロー採用」「ナルシスト採用」からあえて「ズレた若者」を採用するなど、組織に変化を生み出そうとするアクセンチュアは、企業市民活動において「価値創造のイノベーション」に挑む。その狙いとは?(前編はこちらhttp://president.jp/articles/-/16432

社会は多様性そのもの

【市川】アクセンチュアの企業市民活動の一環として、若新さんがプロデュースする「就活アウトロー採用」や「ナルシスト採用」のほかにも、若者の就労支援や若手起業家支援なども行っています。ただ、僕たちが一部のイノベーターやソーシャルセクターの人たちだけと頑張っても、大きなうねりはつくれないんじゃないかと。もっと一般の人たちが自分ごととして取り組めるような仕組みをつくりたいと思っています。

横浜では、「LOCAL GOOD」という、地域の課題をウェブサイト上で見える化することで、地域の人たちが地域をよくするための取り組みに主体的に関わることのできる課題解決プラットフォームを横浜市のNPO法人とともに立ち上げました(http://localgood.jp/)。立ち上げにはNPO、大学機関、行政、企業の方々など多様な人々が関わり、ダイアログを交わすことによって、このプラットフォームが生まれました。

【若新】「地域社会」を構成しているのって、実はほとんどが、普段は問題意識なんか持たずに暮らしている人たちだと思うのです。何か現状を変えようとするイノベーターなんて、市民のほんの一部に過ぎない。もちろん、そういう人たちも必要ですが、地域の課題を考えていくには、「その他の一般の人たち」のほうを巻き込む必要がありますよね。

ただ、ややこしいのは、「その他の一般の人たち」というのは、決してひとくくりにできない。1人ひとりをみていくと、本当にいろんな人たちがいて、複雑な感情があって、限りなく多様ですよね……。

【市川】「多様性」という言葉は、これまでも社内でもよく言われていたんですが、あまり実感がないまま、どちらかというと美辞麗句っぽく感じていたんです。そんなとき、若新さんがニート株式会社などで、個性の異なる多様な若者たちの意見を、まとめるでもなく、教えるでもなく、彼らの主体性を大事にしながら、混沌としたカオス状態から創発的なやりとりを導き出しているのを見て、「これだ!」と。多様性そのものである社会を変えていくには、多種多様な人たちが主体性を持って交われる仕組みが必要だろうと思ったんです。