イノベーションは評価しづらい

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
http://wakashin.com/

【市川】まずは地域の人たちや、NPO、大学、行政、企業など多様な人たちが対話できる場に集まり、お互いが影響し合ってイノベーションが生まれる。これは「オープンイノベーション」とも呼ばれますが、僕らがハブになってそのような場を提供したり、さらにはビジネスとして展開していくことも模索したいと思います。若新さんのファシリテーションや“マネジメントしない空間づくり”などのノウハウを、数値化して再現できたらいいですよね。おこがましいかもしれませんが。

【若新】「オープンイノベーション」というとカッコイイですが、人によっては、ただの「よけいなこと」や「いたずら」みたいに見えるものかもしれません。子どもたちが公園である遊びをやっていたんだけど、誰かが友達のお兄ちゃんを連れて来て、その人がまた別の知り合いを連れて来て……、気づいたら最初とはぜんぜん違う遊びになってた。新しいルールとか、独特のチームができるんだけど、中には当然「最初のほうがよかったな……」「なんかややこしくなっちゃった」って思う子もいるわけで(笑)。イノベーションって、最初は価値があるのかないのか分からなかったりするんだと思うんです。ぐちゃぐちゃしますからね……。

【市川】コモディティ領域でのソリューションは「いくら売れば立派です」という評価が成り立ちますが、価値創造のイノベーションは評価しづらいですよね。「0」から「1」を生み出す取り組みをしている人をどう評価するのか、誰も答えがないんです。評価すること自体が間違いかもしれませんし。僕は幸せなことに、若新さんたちの取り組みを垣間見る機会を得たので、そこで得た気づきを自分たちのビジネスにも取り入れていきたいですね。

【若新】市川さんたちのように、社会で圧倒的な信頼を得ている方たちに、僕たちの活動の価値を認めてもらえるのはとてもうれしいです。セオリーどおりで考えれば、イノベーションのための行動というのは、結果的には成功することもあれば、当然失敗することもあるわけです。

だから、ある意味失敗も覚悟して進まなければいけないわけですが、実は毎回、「なんとか成功させたい」という気持ちに襲われてしまっています。どうしても、「ソリューション」を意識してしまう……。もっと自信をもって、「よけいなこと」に集中できるよう、精進したいと思います。

(前田はるみ=構成)
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