週休4日・月収15万の「ゆるい就職」で2人の若者を採用した、クラウド会計ソフトのfreee(フリー)社。時短勤務ながら2人が活躍できる背景には、「勤務スタイルにかかわらず、期待に制限を設けない」という佐々木大輔代表の人材開発への考えがあった(前編参照 http://president.jp/articles/-/15065)。後編では、多様な人材・働き方を受け入れながら組織を進化させていく、freee社の強さの秘密に迫った。

上書きを繰り返す組織

佐々木大輔(ささき・だいすけ)●freee代表取締役。1980年生まれ、東京都出身。2004年一橋大学商学部を卒業後、博報堂に入社。その後、未公開株投資ファーム投資アナリストやALBERT執行役員を経て、08年にグーグルに入社。マーケティング戦略立案や、パートナー開発に従事。12年にfreeeを創業して現職。
クラウド会計ソフト freee
http://www.freee.co.jp
クラウド給与計算ソフト freee
http://www.freee.co.jp/payroll

【佐々木】僕たちのカルチャーとして、会社のいろんな部分を自分たちでつくっていこうという考え方があります。例えば社内イベントも、トップダウンで決めるより、社員の発案で始まることが多いんです。うちの会社では毎晩、福利厚生の一環としてお弁当を無料提供していますが、会社が成長して社員が増えると、お互いに知らない顔も増えていきます。「いつも同じ仲間同士で食べるのもいいけれど、2週間に1度はランダムに席を指定して、みんなで交流する場にしよう」と誰かが言い出して、実際にそれを始めました。

また、月に1度、社内で飲み会を開いていますが、その際のコンテンツづくりもボランティアで集まった社員たちで行っています。こうしたボトムアップの環境がどのようにうまれたのかわかりませんが、恐らく、会社設立当初からいた人たちがつくりあげてきた雰囲気だと思うんですよね。

【若新】それはつまり、集まった人によって自然発生したものを組織のスタイルにしているんですね。組織はこうあるべき、という型に合わせるのではなく、当事者たちが生み出すもので上書きを繰り返していると。

【佐々木】そうかもしれませんね。他にも、僕たちは意思決定の判断基準を明文化していて、誰が決めてもfreeeらしい意思決定ができるようにしていますが、その判断基準も定期的にアップデートしています。みんなで集まってワークショップを開き、「これはよくないね」とか「この要素を入れたほうがいい」などとブレストした内容を反映させています。

【若新】価値基準すらもアップデートする……、いいですね! 以前もこの連載で書きましたが、僕は人を採用することで柔軟に変わっていける組織が、強い組織だと思っています。これまでの採用サービスは、採用したい人材や仕事が用意されていて、それにマッチする人を選別していました。労働集約型で成長できた時代はそれでもよかったのでしょうが、これから、種をまいて一緒に育てていく活動が必要だと思います。

そのためには、採用される人も、受け入れる側の組織も、一緒に変化していく必要があるんだと思います。新たな人を採用することによってうまれる偶発性を歓迎し、社会環境とともに柔軟に変化できることが、強い組織であるための条件のような気がします。

【佐々木】僕の場合、型が決まっているとつまらないんじゃないか、という恐れがあります。というのも、僕自身、20代の頃に4度転職しているんです。4社目のグーグルに最も長く在籍しましたが、グーグルでは3カ月ごとに組織が変わり、仕事内容も変わるので、飽きることがありません。環境が変われば、物事が自然といい方向に向かうこともありますし。変わっていくことが楽しいという感覚がありますね。