“休める”という新しい報酬
昨年7月にはじめた「ゆるい就職」。これは、「週休4日で月収15万」を目指すといった、新しいワークスタイルの選択肢を提案する実験的な就職サービスです。週3日は密度の濃い仕事をするかわりに、残りの4日は趣味の深掘りや将来のための勉強、副業への挑戦など、とにかく自由で解放的な時間を楽しむ。時短労働によって、人生の「健全な寄り道」が選択できるようになったら面白いのではないかと思ってはじめました(「ゆるい就職」の詳細は連載第7回 http://president.jp/articles/-/13086 を参照)。
このサービスには100人超の若者がエントリーし、高学歴や大企業出身者がたくさんいたことも話題になりました。その後ワークショップ等を経て45人が企業の選考に進み、現在10人近くがこの新しいスタイルで働きはじめています。
実際にやってみて、わかったことがいろいろあります。対象は「25歳くらいまで」としていたんですが、当初、新卒に近い若者のほうがマッチングしやすいだろうと予想していました。「週休4日で月収15万」は、学生生活の延長でイメージしやすそうだし、企業側にとっても、採用が難しい新卒を“お試し”でゲットできるのは魅力的じゃないかと思ったからです。
でも実際に採用されたのは、ほとんどが就職経験のある25歳以上の若者でした。どうやら、一度働いた経験のある人は働くことの厳しさや「現実」をよく分かっていて、仕事へのコミットが強い、ということが大きな理由のようです。週4日休みたいと言っているのに、仕事に対してはむしろ現実的で真剣なのです。
今回採用してくれた企業によると、そんな就職経験のある若者たちは「週3日ならこれくらいの仕事をしてほしい」という要望や期待以上に働いて、ちゃんと成果を出しているそうです。時短で働く彼らにとって、そこそこの給料がもらえる集中労働との引き換えに週4日の自由時間や休みが手に入る、ということは、ものすごく貴重なことなのです。この「ちゃんと休める・自由時間をつくれる」ということは、労働の現実や窮屈さを知る若者にとって、もはや「新しい報酬」の一つになりうるのだと思います。