実験的なワークスタイルを提案中の「ゆるい就職」。週休4日・月収15万といった時短勤務は、若いうちはいいがその後のキャリアアップにはつながらないのでは? という指摘が相次いだ。しかし、このサービスで2人の若者を採用したクラウド会計ソフトを提供するfreee(フリー)社の佐々木大輔社長は、「多様なワークスタイルを受け入れることは企業にも若者にも成長のメリットがある」と話す。
“ゆるい”ワークスタイルは企業にとって合理的
【若新】「ゆるい就職」で2人の若者を採用されました。いわゆるいい大学を出て、大きな会社の正社員も経験している男性・Mくんと、元飲食チェーンの店長だった女性のSさん。2人とも週3日勤務ですが、Sさんは夕方から調理師専門学校に通うため、週5日勤務だけど毎日16時くらいまでという時短スタイルに変更されるみたいですね。
彼らは教養や仕事の経験もちゃんとあるけど、従来の週5日フルタイムで正社員という働き方をやめて、自分なりにアレンジできる自由な働き方を求めています。この2人を採用されたことからも、御社はワークスタイルに対してもともと寛容な会社だったのでしょうか?
【佐々木】多様な働き方を受け入れることは、会社にとって合理的だと思っています。僕らのようなソフトウエアやサービスが中心の業種では、一人あたりの生産性の差が大きく、どれだけ優秀な人を集められるかがとても重要です。一方で、優秀な人ほど自分のやりたいことや想いがあり、一人ひとり働き方に対するニーズが違う。そこに会社が合わせていくほうが、優秀な人たちを集められるし、合理的だと思います。
実際、当社には現在、フィリピンのセブ島在住のメンバーがいます。彼はもともとあちらでニートをしていて、うちで働きたいけれども、セブ島にも住み続けたいと言うんです。エンジニアとして優秀なので、会社としては彼の要望を受け入れて、セブ島にいながらリモートで働いてもらっています。このように働く場所や時間に制約を設けず、働く人たちのニーズに合わせて柔軟に対応することで、優秀な人が集まり、会社の競争力を高めることにもつながると考えています。
【若新】働き方が“ゆるい”のは、仕事がゆるいということではなく、多様な人材を採用して競争力を高めるために、とても合理的ですよね。ところで、セブ島で働くリモート社員の方は、どうやって採用されたのですか。
【佐々木】たまたま当社のウェブサイトを見た彼が直接問い合わせてきて、セブ島に住みながら働けないかと相談してきたのが始まりでした。言ってみれば、偶然の出会いです。
【若新】そういうイレギュラーだけど合理的な採用は、これまでは偶然の出会いに頼るしかなかったというのも、日本の就職システムの問題だと思いますね。そのセブ島社員の方のように、世間で常識だとされる働き方の枠からはみ出していても、有能な若者はいます。一方で、多様な働き方を柔軟に受け入れて採用力や競争力を高めたい企業も存在します。でも、今の日本には「週5日の正社員」を前提としてマッチングしていく採用の入り口がほとんどで、そういう多様でマニアックな人と企業とがなかなか出会えません。