スキルや実績より、一緒に成長できるか
【若新】例えばMくんは、シェアハウスの管理人を続けながら働くために、週3日の勤務を望んでいました。僕は最初、彼はコミュニケーション能力も行動力もあるので、イレギュラーなスタイルの仕事も自分で見つけることができたのではないかと思いました。でも、それが難しかったと言うんです。普通の求人情報で探そうとすると、週3日の仕事は左から右に流す作業レベルの仕事や一時的なものしかなく、長期的に働いて能力も身につくような仕事は全然見つけられないと。つまり、御社のような多様な働き方を受け入れてくれる会社の社長と偶然知り合うとか、知り合いに紹介してもらうような機会がない限り、両者が出会うチャンスはほとんどないですよね。
そんな少数派の若者と柔軟な企業との出会いを意図的につくろうとしたのが「ゆるい就職」です。改めて、2人を採用した経緯と仕事内容を教えていただけますか。
【佐々木】当社では中途採用を随時行っており、相応しい人がいればいつでも採用するというスタンスです。あらゆる職種で募集しており、入社後にその人の適性に応じて仕事内容を決めています。ただ、自分たちが扱うサービスを知るうえで、お客さまにサービスの案内をするカスタマーサポートの仕事は、当社では最初の入口として一般的です。ですから、2人にはまずカスタマーサポートの仕事から始めてもらいました。
【若新】どのような基準で2人を採用したのでしょうか。
【佐々木】通常、僕らが採用する基準と変わりません。基準としては、「一緒に成長できるかどうか」を重視しています。好奇心旺盛で、新しいことに対して自分で勉強して育っていける人かどうか。採用時点でのスキルや過去の実績は特に見ていません。そういうものは働きながら身についてくると思うので。僕らはベンチャー企業やスタートアップである以上、世の中に対して新しい価値を提供していかなくてはなりません。過去の実績やスキルよりも、一緒に学んで成長できるかを重視します。
【若新】2人の働きぶりはいかがですか。
【佐々木】Mくんはカスタマーサポートの仕事をやりながら、「ネット上でこんなコメントがありますよ」とか、「こんなことをやってみたらどうでしょうか」などと全社員向けのチャットで積極的に発言してくれていました。それで、彼にはもっと情報発信するような仕事をやってもらうといいだろうと判断して、今はソーシャルメディアに関する情報の発信やウェブサイトのコンテンツ制作などを担当してもらっています。
【若新】つまり、週3日の時短勤務であっても、仕事内容がステップアップしていっているということですよね?
【佐々木】そうです。Sさんの場合は、彼女自身が飲食店の店長だったこともあり、飲食店の経営者の困りごとがイメージでき、お客さまの気持ちになってサポートできることが強みです。「お客さまはこういうことで困っている」と自分から社内に発信して、周りから評価されていました。そこでSさんには、カスタマーサポートのサービス向上のため、トレーニングプログラムの一部をつくってもらいました。