謎のサークル「パンダ新世紀」

「パンダ新世紀」のステージ

昨年末、僕が大学院で研究を行い、現在は教員を務める慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)から、公式WEBサイトに掲載する、在校生や受験希望者に向けた「SFCスピリッツ」という記事の執筆依頼がありました。自分のコンプレックスと葛藤をありのまま表現しようと思い、「中二病アラサーナルシストが描く妄想的構想とSFC」というタイトルで原稿を提出しました。修正を求められるかもしれないと思いましたが、そのまま掲載されました(http://www.sfc.keio.ac.jp/alumni_stories/20150114.html)。

しばらくはWEBサイトのトップページにもリンクされていたのですが、そのリンク画像は、僕が着ぐるみのパンダとステージで歌っているものでした。現在の活動に加えて、大学院生時代に立ち上げた「パンダ新世紀」というサークルについても触れたのですが、意外にもたくさん問い合わせをもらいました。実はこれには、忘れられない物語があります。この場を借りて、簡単にご紹介したいと思います。

僕は地方の公立大学出身で、先輩との起業を経て20代の半ばにSFCの大学院に入り、組織心理学の研究を始めました。人見知りで寂しがり屋な僕は、なんとかうまいことたくさん友達をつくろうと思って、いい歳をしてサークルの立ち上げを画策しました。

コンクリート剥き出しの建物が多く無機質な感じのSFCの敷地内で、着ぐるみのパンダが徘徊していたらシュールで目立つだろうな、と考え、「パンダ新世紀」なるサークルを立ち上げました。中学から起業していてリッチな後輩と一緒に、とりあえずインターネットで1体3万円のパンダの着ぐるみを4体購入しました。しかし、僕は身長が高く着ぐるみにうまく入れないことが判明。そこで、ゼミの後輩の学部生A君に、着ぐるみに入ってほしいと頼みました。

A君は、父親は都銀の役員という家庭に育ち、都内名門高校を卒業、TOEICは980点という秀才でした。しかし、あまり自己主張をしないおとなしい性格で、若新からの「パンダの着ぐるみに入ってくれ」という強引なお願いも、「1日だけですよ……」と言っていやいやながら引き受けてくれました。そんなA君に、不思議な変化が起きました。