「立ち止まりたい」という需要

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
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一方で、新卒の若者は、労働や俗にいう「社会人生活」の現実をほとんど知りません。仕事に対する思い込みや幻想も色々あるみたいで、週3日という時短労働にもかかわらず、あれこれ細かい要望が多かったようです。これは、新卒に近い彼らのマッチングが進まなかった大きな要因になりました。

「ポテンシャル採用」なんて言いますが、それは時間や就労スタイルといった「型」へのフルコミットがあって、はじめて価値がある、ということなんでしょう。そうじゃなきゃ、真っ白な若者を一から教育する意味なんてないですからね。

一般的には、学生に近い20代前半よりも30代に近いほど、安定した報酬や労働スタイルを望んでいると思われがちです。でも、3年ぐらい働けば、少しは貯金もできるし、仕事の現実や自分のことも分かってきます。その中には、あえていったん立ち止まって、人生に幅をもたせたい、家族をもつ前にもう少し模索したい、と考える人もいると思います。

そして今後は、そういう人が増えていくと思います。彼らは、時短労働や自由な時間を求める一方で、仕事そのものへの意欲は高く、成果へのコミットも強い。「立ち止まりたい」というのは、単にサボりたいのではなく、寄り道や遠回りを含めて頑張りたいのです。この「複雑なモチベーション」を、決して無視してはいけないと思うのです。

もちろん、安定した“かたい”雇用モデルは社会に必要ですが、もっと多様な、やわらかい就労モデルも自由に選べるようにならないとダメなんじゃないでしょうか?