仕事はかたく、組織はゆるく

大勢が集まる会議やワークショップで、手をあげて意見をするのは恥ずかしい。発言に自信もない。でも、思っていることや言いたいことがないわけじゃない。だから、若者向けのイベントや集まりでは、自分の携帯から匿名で好き勝手にコメントできて、お互いにそれを共有できる簡単なチャットシステムをよく使います。

この匿名のコメントチャットを、企業の社内会議で使うのはアリか、ナシか?

社長を「祭り上げ」た匿名セッション

とある上場を控えたシステム開発会社から、組織風土に関するご相談を受けました。技術の確かなエンジニアが集まり、金融関係などの重要な社会インフラを支えるシステムをつくっています。顧客からの信頼も厚く、会社の業績も順調。そこで、上場を前にコーポレートアイデンティティの再構築や社名変更に取り組もうとしていました。しかし、いざ会社のあり方について議論しようとしても、なかなか社員から反応がない。社長や役員が会議や社内SNSなどで問いかけても、沈黙したまま。

「ひとつになりたい」というのが、その会社の社長からのご相談でした。

実際にオフィスを訪ねてみると、社内は極めて静か。しかし、別室で社員一人ひとりに話を伺ってみると、それぞれがさまざまな想いや考えを持っていて、よくしゃべる人も、マニアックなパーソナリティの人もたくさんいます。けれども、会社の事業組織は拡大に伴って複雑になり、日常的に全社コミュニケーションを行うというのは物理的にも難しい状況で、勝手な噂や憶測がひとり歩きすることもよくあるようでした。かといって、たまに行われる全社総会でみんなが一斉に声をあげて議論する、というようなことも現実的じゃありません。

質の高いサービスで、顧客からの信頼を得て、業績も順調。「かたい」仕事ができる会社は、どうして規模の拡大に伴って組織もかたくなってしまうのか。社員一人ひとりの色々な考えや感情が共有できる、「ゆるめる」組織コミュニケーションをつくれないか、模索してみました。