“なんとなく”住みたいまち
最大半年間、「家賃無料」で田舎暮らしを体験してみる。「JK課」に次いで、故郷福井県の鯖江市で「ゆるい移住」という事業をお手伝いさせていただいています。
ゆるい移住WEBサイト:http://sabae-iju.jp/
これまでのIターン事業や移住促進事業は、地元企業への就職や、農業や地場産業に就くことを斡旋するもの、地域資源を活用した起業促進を目的とするようなものがほとんどでした。つまり、そのまちに住んで何をするのか、受け入れ側によってあらかじめ目的が明確に設定されていました。
でも今回の「ゆるい移住」事業は、そういった出口をあえて一切決めず、市が管理する住宅を県外の移住希望者に家賃無料でしばらく開放し、共同生活をしてもらう。そして、まずは気軽にまちでのくらし体験をしてもらおう、という実験的な地方創生プロジェクトです。
このプロジェクトを提案したきっかけは、「鯖江を『住みたい』と思ってもらえるまちにしたい」という牧野百男・鯖江市長(連載第25、26回参照 http://president.jp/articles/-/15394 http://president.jp/articles/-/15441)の声でした。地域内外の人にとって「住みたい」まちとはどんなものかを考えてみると、必ずしも「こんな歴史や伝統産業があって、農業や水産業など地方ならではの特徴的な仕事に就ける」というようなことではないはずです。
実は、鯖江市は社会増(市外からの転入)によって現在福井県内で唯一人口が増加しているまちです。そして、実際に転入してきた人の多くは伝統産業や農業などに就いているわけではありません。理由を聞いてみると、「なんとなく雰囲気がいいから」だと言います。同じような田舎まちである近隣地域から転入してくる人にとっても、この“なんとなく”が重要な決め手になっている。僕は、これこそが注目すべきまちの魅力なんだと思いました。