20代の保険加入率は男女とも50%

デフレ脱却と経済の堅調さが追い風となり、生命保険業界は好決算に沸いている。とはいえ、国内にあっては人口減や少子高齢化などマーケット縮小の懸念材料は消えない。一方で、大手生保によるM&Aも加速。各社が攻勢を強めるなか、この7月に生保協会長に就任した筒井義信・日本生命社長に話を聞いた。

──主要生保各社の2015年3月期決算が好調だ。

円安・株高によって、海外を含めた保有資産の運用環境が好転したことが背景にある。各社とも、おおむね逆ザヤから脱し、順ザヤに入った。半面、歴史的ともいえる超低金利は、中長期的に見ると生命保険会社の収益力を毀損しかねない。国債も長期金利が下がっていることから、投資ポートフォリオを検討するうえで、スコープを広げる必要もある。

──そうした局面で、協会長として任期中に取り組みたいことは。
生命保険協会会長 筒井義信氏

まず、社会保障制度への提言がある。現在、厚生労働省を中心に様々な検討が進められている。そこでは財政負担の限界から、年金の見直しも取り沙汰され、自助努力の重要性が指摘された。そこで、私どもとしては、年金分野にフォーカスし、公的年金を補完・代替する私的年金の役割を強く訴えたい。すなわち、年金の「公私連携」の呼びかけだ。

さらに、保険教育の推進に取り組んでいく。人生設計における保険の大切さを理解してもらうことで、若者の保険離れを止めたいからだ。いま20代の保険加入率は、男女とも約50%にとどまっている。これでは、将来の安心を担保できない。これまで通り、保険関連の教材を提供することに加え、中学・高校の家庭科等の授業に保険教育をカリキュラムとして加えてもらうよう、働きかけていく。

──人口減少と少子高齢化による国内市場の縮小が懸念されている。

その点は、必ずしも悲観的には考えていない。保険のニーズが多様化しており、そこにチャンスがあると考えるからだ。お客様セグメントごとのニーズに応じた商品開発・チャネル戦略を展開していけば、活路はある。例えば、現在、個人金融資産は約1700兆円にのぼり、その多くはシニア層のものといわれる。この層には、死亡や疾病保障だけでなく、資産形成あるいは相続・贈与といったニーズもある。生命保険を活用して、シニア層のニーズを充足させていくことが必要だろう。