折形とは和紙で包み、水引で結んで贈り物を贈る日本の伝統的な礼法です。冠婚葬祭の「熨斗(のし)袋」や「掛け紙」などが現在の折形としては一般的ですが、古くは昆布や扇子など、贈答する際にはすべてを和紙で包み、結びをほどこして贈っていました。
何を贈るにしても、大前提にあるのは相手を思いやる心。贈る側と受け取る側の関係性や場面によって、思いや気持ちをどう伝えるかによって、折形の形は決まっていきます。
折形に取り組んだきっかけは、伊勢貞丈の『包之記(つつみのき)』という江戸時代の一冊の本。本に描かれた美しい図版に惹かれて購入した本ですが、内容を読み取ろうと、折形を研究する先生のもとを訪れたことがすべての始まりでした。
当時西洋を中心に海外の文化ばかりに目を向けていた私は、先生の教えを受け、自分の足元にある日本文化の奥深さにのめり込むことになりました。伝統的な文化の集約されている“奥ゆかしさ”こそが、日本におけるデザインの根本ではないかと感じたからです。
たとえば西洋的なラッピングにしても折形にしても、相手に喜んでもらいたいという気持ちは同じですが、異なるのは贈り手の個性を主張するかどうか。その視点で2つのあり方を観察してみると、装飾が多くて派手な西洋のラッピングに対して、折形は白い和紙をベースにしてシンプルさを追い求め、決して主張することがない。それは慎ましくて奥ゆかしいことを求める日本の生活様式や文化にも通じています。