私の建築事務所では、提案する建築物のイメージを正しく伝えるために、日常的に完成物の模型を作っています。そのときにセットで必要なのが、人や自転車、樹木などの「添景」と呼ばれるパーツです。しかし、これら1つひとつのパーツを手作業で作ろうとすると、どうしても徹夜作業になってしまう。すぐに使えるものがあれば作業が楽になるかもしれない――。「1/100 建築模型用添景セット」を手がけたきっかけです。

デザインした人 寺田尚樹(建築家/デザイナー)

発売当初は、設計者向けに「住宅編」「オフィス編」などのシリーズから展開していきました。でも実際の購入者は、ターゲットにしていた設計者ではなく、大半はデザインや建築などを専門に勉強する学生でした。しかも男性ではなく女性に、また外国人の土産としても人気があり、段々と、雑貨としても受け入れられていることがわかってきた。

そのことを確信したのはシリーズ4作目で「動物園編」が今までになく売れたとき。以来、「クリスマス編」「海女さん編」「田植え編」など、建築というジャンルにとらわれずにシリーズを展開しています。このようなラインアップは、テラダモケイの根底にある、模型を通して使う人をワクワクさせたり、驚かせたりする「遊び心」にも通ずるところです。

なので、作り手にも遊び心を持って好きなように作ってほしい。そのためには、作り手の気持ちが込められる余白が重要になってきます。だから、解釈の余地がどれだけ生まれるか、形を操作してデザインしていくことに、最も気を配っています。