土木・建設の現場が「危険で汚くキツい」のは、過去の話だ。最新のITを使えば、そこは「安全で効率的な職場」に変えられる。建機業界の雄が挑む「工事現場のスマート化」とは――。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/15910)

「熟練オペレーターは5年後にいなくなる」

従来、コマツは建機のメーカーであり、実際の施工にかかわってきた会社ではない。販売・レンタルした後の建機の活用は各々の建設会社に任せていた。その意味で現場の測量にまで責任を負い、工事全体に深く関与する事業は、彼らの全く新しい挑戦となる。

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(右)業績は「リーマンショック以前」まで回復(左)売上高の8割を「海外」で稼ぐ

社長の大橋徹二は会見で「早期の売り上げ100億円」を事業の目標として掲げた。コマツの年間売上高は約2兆円。そのうち8割は海外市場で、国内向けは2割に満たない。そうした同社において、「国内向け」で「100億円」という目標は小さく感じられるかもしれない。だが、大橋は近い将来、スマートコンストラクションが同社の事業の核へと育っていくという大きな期待をもっている。それは世界の工事現場の風景を一変させることでもある。

大橋の掛け声でスマートコンストラクションの事業化が始まったのは昨年の春のことだ。この事業の責任者で、当時は子会社・コマツレンタルの社長だった四家千佳史は、東京・溜池山王にある本社に呼ばれた。

「われわれが提供するサービスの合格点は、お客様に『ワオ!』と言ってもらうこと。そうでなければダメなんだ」

大橋はおもむろに言うと、さらにこう続けたという。

「今後の日本の建設業の直面する課題は100社100通りではない。労働人口の不足というたった1つなんだ」

東日本大震災以降の土木建設業界は、東京オリンピックによる特需もあり、市場環境は良好のように見える。だが、足元では1990年代から続いた不況や工事量の減少によって、深刻な人手不足が進んでもきた。現在、土木建設業界では約340万人が働いているが、人口減少も相まって2030年までに約130万人がいなくなると予測されている。建設会社アトスの渡邊は、「現場の実感としては、5年後には熟練オペレーターがほぼいなくなる」と危機感を露わにするほどだ。