大橋もまた、スマートコンストラクションを「ダントツ商品を最大限に活用するためのダントツソリューション」と表現している。
大橋は1977年の入社以来、一貫して工場の生産管理部門を渡り歩いてきた。海外勤務も長く、内外の工場の変化を間近で見つめ続けてきた彼は、中長期的にスマートコンストラクションによる施工が、世界のスタンダードになる未来を思い描いていると話す。
「入社当時、工場では多くの作業が人の手によって行われていました。それだけに事故もあり、管理監督者として耐え難い気持ちになった。多くの工程が自動化・効率化され、いまの工場は昔と比べてはるかに安全な場所になりました。私はこの数十年の間に工場で起きたことが、建設現場でも起きていくと考えています。現場の安全性と効率性をICTによって高めることが、『3K』の職場として人気を失った建設業界のイメージを、根底から変えていくと期待しているんです」
最終的な目標は工事現場の「無人化」
大橋や四家の話を聞いていて興味深いのは、彼らの語る未来像が「現場の効率化」だけではなく、土木建設業界のイメージそのものを変えるものでもあることだ。そこには業界の“いま”を憂う彼らの情熱が感じられた。
例えば、四家は地元・福島県で建機レンタルの会社を始めた際の気持ちを同時に語った。
「私が建機の代理店を立ち上げた97年頃、周りにあるのは業界の先行きを嘆く声ばかりでした。建機のレンタル料は最盛期の半値で、貸出先の稼働率も低迷していた。それでも改善策を誰も考えようとしない。『4割の稼働率を8割にすればいまの倍は稼げる』と話しても馬鹿にされるだけでした」
そこに現れたのがコムトラックスだった。四家は貸し出した建機の稼働状況を把握することで、営業マンやサービスカー、建機の配車や整備などの動きを最適化していった。そうして建機の稼働率を向上させたことが、彼の現在のキャリアの原点だった。
「技術として世界トップレベルの日本の建設業には、まだまだ大きな可能性がある。生産性が上がれば、輸出産業にだってなるはずだと僕は思っている。例えば、スマートコンストラクションを使いこなす中小の建設会社が、世界中の現場で仕事をするような未来。それが僕の思い描いている夢なんです」