アベノミクスの成長戦略を担う技術にロボットがある。少子高齢化に伴う労働力の代替や現場の作業負荷の軽減といった役割のほか、製品・サービスの質と生産性をさらに向上させると期待されている。具体的には、製造分野だけでなく、医療・介護、清掃、移動支援などのサービス分野への普及である。
現在の市場規模は約1兆円で、その8割程度を占めるのが産業用ロボットだ。三菱総合研究所の三治(さんじ)信一朗研究員は「この分野は出荷・稼働台数では世界一。従来は単品売りビジネスで稼いだ。今後も設計からオペレーションまでを一気通貫で請け負うシステムインテグレーションと呼ばれる世界的なニーズを取り込んでいければ、さらなる拡大が可能で、2035年には2.7兆円が見込まれる」と語る。
当然、主たる市場創出は海外といっていい。現在でも輸出が半分を超えているが、今後も魅力的な市場は中国であり、ASEANなどの新興国である。ただし中国は近い将来、導入国から輸出国へ舵を切ることも図っており、これまで産業用ロボット市場は、日本と欧州勢が独占してきたが、業界地図が急速に変わってきた。
三治氏は「遅くともここ数年でロボットを取り巻く産業構造が、システムインテグレーター中心に切り替わる。日本でも品質面でのイノベーションに加えて、人材の育成も急務になっている」と話す。そこをブレークスル―できれば、サービス分野でも付加価値が高められ、ロボット市場全体は9.7兆円まで成長できるという。
(ライヴ・アート=図版作成)