仕事をするのなら、よい仕事ができて、楽しいほうがいい。よい仕事とは、実践や行動が認められて評価される仕事のこと。それに必要なものが、論理的思考力を高めて物事の本質を見抜き、新しいものがひらめいていく力なのだ。
ひらめきとは、新しい情報などのインプットがあったときに、それと関連する頭のなかのさまざまな「引き出し」がサッと開くことだ。そこで、引き出しの中身を充実させ、いつでも反応できるように整理・整頓しておく。それが論理的思考力、考える力である。
そんな考える力を発揮するのに当たって、まず大切なのは身の回りの情報や現象を正確にキャッチすること。とはいえ、私たちの周りにはさまざまな情報が飛び交っている。そこから正確に情報をキャッチするには、「仮説」というフィルターが必要になる。
これから紹介していく経営者全員に共通しているのは、「徹底したお客さま志向」という仮説を通して物事を見ていることだ。また、何か大きな壁に直面したときでも、「できる理由」を前向きに考え、困難な状況を打破してきたことでも共通点があることに気づく。
「できる理由」を仲間とともに模索する
「景気が悪い」「天候が不順だ」。ビールが売れない理由はいくらでも探せます。しかし「できない」と考えたら、それに引っ張られて行動も「できない」ほうへ流されます。売れない理由を考えるからなお売れなくなる。そんな負のサイクルに陥らないように、まずは「できる理由」を考えるのが私のやり方です。
私の会社人生の前半は、悔しいことにライバルに売り負けることの連続でした。1980年代の後半までアサヒビールは年々シェアを落とし続けていたので、酒屋さんにもなかなか売ってもらえません。けれども、考え抜いて工夫を凝らしさせすれば「売れる」のです。
たとえば、酒屋さんに頼み込んで瓶ビール1ケースのうち四隅に一本ずつアサヒビールを入れてもらったり、4分の1をアサヒにしてもらったりする「クオーター(4分の1)作戦」。でも他社のビールにアサヒを交ぜるだけでは、消費者から酒屋さんに苦情がきてしまいます。