気になる数字を一冊の手帳に収集
私は、仕事に役立ちそうな数字も役に立たなそうな数字も、アンテナに引っかかった数字はすべて、一冊の手帳に“収集”している。収集の仕方は、主に新聞の切り抜き。土曜日か日曜日、いずれかの午前中、4~5時間を費やして、1週間分の新聞に丹念に目を通す。そして気になった表やグラフを切り抜いて、手帳に貼り付けていく。後日、表やグラフを補足するような数字を雑誌や書籍で見つけたら、転記することもある。
では、私はこの手帳をどのように活用しているかというと、数字が必要になったときに、すかさず胸ポケットから引っ張り出す……わけではない。
移動中の車の中、出張で飛行機に乗っているとき、小1時間でも時間ができると手帳を開く。そして、貼り込んである表やグラフの数字を片っ端から覚えていくのである。これを、何度も何度も繰り返す。手帳は1年で一冊を使い切るペースだが、ともかくその年度の手帳を常に携行して、暇さえあれば目を通す。
なぜ、そんなことをするかというと、数字はある程度覚えなければ役に立たないからである。必要になったときだけ手帳を引っ張り出していくら正確な数字を口にしても、それほどの意味はない。
頭に記憶させたさまざまな数字が有機的に結びついたときに、モヤモヤとしていた将来の世界経済の姿が、突然霧が晴れたように見えてきたりする。あるいは、部下が上げてきた書類の過ちを、くっきりと見通すことができたりする。
多くの表やグラフが貼り込まれ、数字が書き込まれた手帳は、私にとって“小説”のようなものでもある。よく、名作と呼ばれる小説は読むたびに異なる味わいを伝えてくれるというが、私の手帳もまったく同じなのだ。
(08年11月3日号 当時・社長 構成=山田清機)