率先した行動で生み出す信頼関係

リーダーと言われて、思い浮かべるのはどのような存在だろうか。自分の代わりに行動を起こしてくれるカリスマ的な人物か、あるいはこの人についていけば大丈夫だと救ってくれる人か……。リーダーシップ論の専門家サイモン・シネックはTEDのプレゼンで「リーダーとは、不公平な経済社会のもとで、信頼でき安全性を確保してくれる人」だと語っている。つまり、人間が持つ安心への根本的な欲求を満たしてくれる人だというのだ。今回は、そんなリーダーシップ論をいろんな角度でみてみよう。

リーダーシップに関しては、古くはプラトンが理念を持ったリーダーが国を治めよと唱え、マキャベリは「君主論」で権謀術数に長けたリーダー像が望ましいとするなど、常に優れたリーダーに共通する身体や性格、あるいは行動特性が研究されてきた。

20世紀になると、リーダーの特性として「公正」「正直」「誠実」「思慮深さ」「公平」「機敏」「独創性」「忍耐」「自信」「攻撃性」「適応性」「ユーモア」「社交性」「頼もしさ」……などがあげられるようになる。さらには、集団の目標を達成するために、メンバーの調和を考えながら、各自の能力を引き出し、強い決断力を持ち合わせ、全体を見渡す冷静さを持つ人物が評価される傾向がみられるようになってきた。

「現代の不安定な経済状況、流動的な株式市場、貪欲なライバル企業……といった経済活動の安価で、ビジネスの世界は危険に満ち溢れ、リーダーはサバイバルの姿勢を見せる必要がある」とシネック氏は語る。

たとえば、戦時下で銃弾をものともせずに仲間を助けに行く軍曹に「なぜそんな行動を取ったのか?」 と聞くと「他の人も、自分に対して同じことをしたでしょう」と答える。ここには大きな信頼と協力がある。ただ難しいのは、信頼と協力は気持ちであって指示されてすることではないため、「信じてくれ」だけでは信じてもらえず、「協力しろ」と言うだけで協力するようにはならない。

自ら率先して行動することで信頼関係が生まれ、誰よりも先にリスクを冒すリーダーに対して、人は協力的になるわけだ。部下が“守られ安心できる”ように自らは犠牲になる選択をすることで、自然と人々が皆のために犠牲を払うようになるというのだ。

具体的に必要なのは、こんなことだという。