お辞儀は“ファーストイン”&“スローアウト”

大森ひとみ(おおもり・ひとみ)●大森メソッド社長兼CEO、AICI国際イメージコンサルタント協会最高位イメージマスター。武蔵野音楽大学声楽科卒業後、日産自動車に入社。ミスフェアレディとして勤務の後、研修センター講師として人材教育に従事。その後大手人材派遣会社教育部長を経て、1990年人材教育及びイメージコンサルティングを専門とする大森メソッドを設立して現職。 >>大森メソッドのWebサイト http://www.ohmori-method.co.jp/

「どこが違う」と明確には言えないのに、相手の些細な振る舞いから、にじみ出る風格やデキる雰囲気を感じたことはおありだろう。

「日常の中の何気ない動作を見直していけば、ご自分の伝えたいメッセージやご自身の見え方に一貫性ができます。これがその人物のイメージを確立するひとつのポイントになるのです」

前回に引き続き、2011年国際イメージコンサルタント協会(AICI)において世界で9人目の最高位イメージマスターの称号を受け、国際イメージコンサルタントとして活躍する大森ひとみさんにお話をうかがった。

大森さんは、相手に伝えたいメッセージや見え方が少しずれることで、自身が考えているものと印象が変わってしまうため、まずは自分のイメージのポイントを見極める必要があるという。たとえば挨拶ひとつがその人のイメージを大きく左右する。「本日はお越しいただきまして、ありがとうございます」と言うだけで、何百回も練習をする必要があるそうだ。

「挨拶の角度ひとつも大切です。たとえば記者会見で役員の方が出ていらしたら、記者やみなさんが、どんな役員の人なのかを座った姿勢、歩き方などから判断します」

威厳を持ってにこやかにあいさつをされるだけで、その人物の印象はグッとよくなる。この連載でお伝えしてきたように、聞き手を自分に肯定的な心理に導いて、自分への同調ムードをつくり上げることにもつながるだろう。ひとたび聞き手を味方につけると、驚くほど肯定的に話を聞いてもらえるようになるものだ。

では、具体的にどうすればいいのか。最初の「みなさん」の声のトーンが暗かったり、面倒臭そうに歩いたりといったことを直すだけで、パフォーマンスが見違えるほどによくなる。ただちょっと頭を下げるのではなく、まずは会場を見わたしたら、一呼吸おいて“ファーストイン”ですばやく上体を前に倒して挨拶をし、“スローアウト”でゆっくりと上体をあげ、また一呼吸置く。こうしたトレーニングだけでも、その人物の見え方は大きく変わるという。

「出すぎてはいけない、大げさにならないように……といった意識が働くことで、パフォーマンスが出し切れないように思えます。普段の3割アップのパフォーマンスをするつもりでやっと、人の前に立ったとき9割に届くくらいが表現できるものです」と大森さんは語る。

それは、舞台で演じるのに少し似ている。舞台俳優がテレビドラマに出てくると少々大げさに感じられ、逆にテレビ俳優は舞台ではいつもよりも大げさに振る舞わないことには周りよりも引けて見えてしまう。人の前に立ったときには、少し大げさなくらいがちょうどよくなるのだ。

さて、今度は自分の“クセ”について見直していこう。