「個人の需要が落ちても人間の心理に訴えれば、必ず売れる」――景気が後退し、ものが売れない時代に入ると、その発言ににわかに注目が集まるのが国内最大の流通企業グループ、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼CEOだ。

<strong>鈴木敏文</strong>●セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO。1932年、長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン─イレブン・ジャパンを創設して日本一の小売業に育てる。2003年イトーヨーカ堂およびセブン─イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。05年セブン&アイ・ホールディングスを設立し、現職。
鈴木敏文●セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長兼CEO。1932年、長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)入社。63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン─イレブン・ジャパンを創設して日本一の小売業に育てる。2003年イトーヨーカ堂およびセブン─イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。05年セブン&アイ・ホールディングスを設立し、現職。

「商売は心理や感情で動く」

「消費の飽和時代には、欲しい商品を積極的に探し出す“目的買い”より、店頭で商品を見て、これなら買おうという心理が働き、手が伸びる“衝動買い”が主流になる」

「不景気の時代に突入し、財布のヒモが固くなればなるほど、顧客の心理により強く訴えなければならない」

……などなど、鈴木流経営の真髄は独自の心理学経営にある。その心理学経営はまた、人の働き方についても、鋭い切り口を見せる。不況に入ると人はとかく守りに転じがちだ。しかし、守りに入れば入るほど、売り上げが落ちる悪循環に陥る。

時間の使い方にしてもそうだ。人間、余裕がなくなると、今の仕事の仕方を変えられないまま、根本的な問題を解決できず、目先の課題に忙殺される悪循環にはまっていく。

このように、顧客に商品を買ってもらうには、相手の心理をしっかりつかまなければならない。その一方で、自分自身の仕事の仕方を変えるには、陥りがちな心理から脱却しなければならない。

不況の時代、どんな売り方、働き方が求められているのか。ここで心理学経営の第一人者に5つの質問をぶつけてみよう。その答えを見れば、解なき時代に一筋の光明が差すことだろう。