繊維事業を源流に持つ非財閥系商社の雄は、今や業績が絶好調である。「非資源ナンバー1」を掲げながら、リスクとポテンシャルを冷静に見分け、数字の達成にこだわる岡藤経営はどこから来ているか、徹底調査した。

伊藤忠商事代表取締役社長 岡藤正広氏

「か、け、ふ」(稼ぐ、削る、防ぐ)、「110」(一次会まで、午後10時にお開き)、「朝型勤務」など、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)社長、岡藤正広のこれらの興味深い語録は、何度もマスコミに取り上げられてきた。

2010年社長に就任して以来、岡藤は「住友商事を抜いて業界3位になる」「非資源分野でナンバー1商社を目指す」目標を掲げ、実行してきた。14年3月期の純利益は3102億円と過去最高を記録。業績を牽引したのは、「非資源分野ナンバー1」の通り、住宅

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(上)2013 年度「大手商社」純利益 (下)伊藤忠商事の純利益と資源/非資源比

資材・不動産などの住生活・情報部門で46%の伸びで、米食品大手「ドール・フード・カンパニー」(以下、ドール)からアジアでの青果事業、グローバルな加工食品事業を買収した食品部門は、26%増加するなど、非資源で稼げる体質が強化されたことを証明した。

社長就任以来、“伊藤忠・岡藤”の軌跡を、岡藤の発言や資料などでたどると、あることに気づかされる。「組織は生き物で、組織を率いる者の人格、性格、意思が如実に反映される」と。岡藤の際立ったキャラクターなくして、業界3位の伊藤忠は存在しないだろう。

好調な伊藤忠の業績を反映し、商社の新御三家は、「三菱商事、三井物産、伊藤忠商事」と呼ぶ声もある。では岡藤は、どのように伊藤忠を変えたのか。