「僕みたいなキャラクターでも商売ができる方法は何だろうか」

岡藤は切羽詰まっていた。お客に儲けさせる方法こそが、自分を認めさせることであると。そう信じて、得意先の一つである「高島屋」に足を運ぶ日々が続いた。どんな客がいるのか。どんなライバルがどんな商品を持ってきているのか。何が売れているのか。岡藤は現場に足を運んでは観察し、考えた。目をつけたのは高島屋が扱っていた「エマニュエル・ウンガロ」「ピエール・カルダン」である。

「このブランドで生地をやったら絶対に売れる」

岡藤の読み通りだった。ブランドビジネスは、岡藤に活路となった。ところが、社内の軋轢はまだ残っていた。

「腹が立つことはあったけど。自分も自信ないし、頑張らなあかんかった」

岡藤は入社後、逆境の下、学び続けてきた。常に問題意識を持ち仕事をすれば必ず何かが引っかかってくる。それが商売になる。そのためには予習だ。

「人よりも努力することでしょうな」

当時、孤立無援の中で絶対に失敗できないという緊張感は、岡藤のアンテナを研ぎ澄ませていったのだろう。

「自分の成功体験を実践させている。だから現場だ。だから数字だ。だから朝は早く来いって」

伊藤忠商事代表取締役社長 岡藤正広
1949年、大阪府生まれ。大阪府立高津高校卒。74年東京大学経済学部卒業後、同年伊藤忠商事に入社。2002年6月執行役員。04年4月常務執行役員繊維カンパニープレジデント。同年6月常務取締役。06年専務取締役。09年取締役副社長。10年4月より現職。
(的野弘路=撮影)
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