戦後の経営者には言動や所作を真似したくなるような、堂々たる紳士も少なくない。以下に紹介するのは、財界史を彩ったジェントルマン経営者の肖像である。

なぜ「タケオだけは格別」なのか

椎名武雄●1929年、岐阜県生まれ。42年4月、上京し、慶應義塾普通部入学。51年、米国留学。53年、日本IBM入社。75年、代表取締役社長。87年、売り上げ1兆円突破。93年、会長。99年、最高顧問。2000年、勲一等瑞宝章受章。07年、相談役。(AFLO=写真)

事業構想大学院大学学長、多摩大学名誉学長、財団法人日本総合研究所会長など……。85歳の現在も多数の要職をつとめる経営学者の野田一夫が「いちばんの親友」といい、話題にするたび相好を崩すのが日本IBM社長・会長を歴任した椎名武雄だ。

野田は企業成長論とともに経営者論を専攻し、ニュービジネス協議会の初代理事長をつとめるなど経営者たちとの交友関係もたいへん広い。そんな野田は「ふっとその顔を思い浮かべただけで心が和む友人が多い」というが、なかでも「タケオだけは格別だ」と断言する。椎名のどこが野田の心をつかむのだろうか。