キャリア開発に関する記事はどれもみな同じことを勧めています。「よいメンターを見つけなさい」と。それは納得のいくアドバイスでもあります。メンターは、知識や経験の奥深い世界を教えてくれ、多くの人の人生できわめて重要な役割を果たしてきたのですから。そこでお聞きしたいのですが、24歳の若者がビル・クリントンやウォーレン・バフェットのような人に30分だけでも会ってもらうためには、どうすればよいでしょう。スティーブン・J・ポメロイ(ニューヨーク州ニューヨーク)
あなたは見当違いをなさっています。たしかにクリントン氏もバフェット氏も、人生や仕事でいかに成功するかについて深い叡智を授けてくれるでしょう。しかし、メンターとは、あなたに割く時間が30分しかない有名人のことをいうのではありません。実を言うと、あなた1人のために2週間ごとに1時間割いてくれるあなたの会社の幹部のことでさえないのです。
そういう人がメンターの場合もありますが、それはあなたのメンターがほかにも大勢いる場合にかぎられます。そして、それが私たちの話の核心なのです。第1級できわめて偉大な、ただ1人のメンターというのは、たしかに誰もが追い求める理想です。しかし、そうしたチャンスはきわめて限られています。そんな有名人でなくても、あなたは、自分のキャリアの道筋で出会うあらゆる人に、なんらかの分野でメンターになってもらうことができるのです。何であれ、彼らが知っていてあなたが知らないことを教えてもらうことができるのです。
もちろん、多くの企業が、必ずしもこのような考え方でメンタリングに取り組んでいるわけではありません。優秀な若い社員に分別のある年配の社員をつけて、定期的な面談を行わせる公式のメンタリングプログラムを設けている企業はいくらでもあります。そのような人為的な関係は、社員食堂への道順や会社の福利厚生制度の利用の仕方を教えるには有効でしょうが、本当の親近感や仕事に関連した意義が欠けているため、すぐに形骸化してしまいます。
それに対し、最も望ましいメンタリング関係は非公式なものであり、身近な上司との間だけでなく、同輩や部下との間にも築くことができます。つまり、あなたの知識や考え方を広げてくれる人なら誰でもいいのです。社内外での、また部署内外でのこうした関係は、数週間で終わることもあれば、一生続くこともあります。友情に発展することもありますし、実利的な関係だけで終わることもあります。いずれにしても、あなたに何かを教える気のあるあらゆる人から、あらゆる機会に学ぶことです。
世界の第1級の識者たち、(つまりあなたにとっての権威)に会おうとすることがいけない、と言っているのではありません。時間をもっとうまく使う方法、つまり長期的に学んでいく方法があるのではないかと言っているのです。さまざまな人から優れたアイデアを引き出すことを心がけてください。優れたアイデアと出合うたびに、あなたはメンタリングの経験をまた1つ積み重ねることになるのです。