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伊藤忠商事社長 岡藤正広(おかふじ・まさひろ)

1949年生まれ。東大卒。74年伊藤忠商事入社。専務などを経て2009年4月から副社長。10年4月社長。


 

「2013年度の為替の前提を90円に変えたが、ふたを開けたら他社はみんな95円。しもうた! と思うた」。5月半ばに開かれた伊藤忠商事の決算説明会で、岡藤正広社長の軽妙な語口に笑いが起きた。

このころ為替は102円前後。1円円安になると20億円利益が増える計算で、保守的に予算を組んだことをアピールした。また三菱商事が20年までの利益計画を示したことに関連して、長期的な利益成長のイメージを問われると「前はそういう数字を言うてたけど、その通りになってたら今ごろ連結純利益は5000億円を超えとる」「あまり先のことを言うても、そのとき僕は社長ではない。自信のある会社は良いけど僕は自信がない」とかわした。ユーモアたっぷりで気の利いたしゃべり。取引先などに岡藤ファンは多い。

岡藤氏の出身は繊維畑。1980年代後半にライバルとの争奪戦を勝ち抜いて、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」の独占輸入販売権を獲得したことは語り草だ。だが、バブル崩壊後は百貨店の売上高が15年連続で縮小するなど既存のアパレル業界は低迷が続いている。そうした中で岡藤氏は10年に社長に就任。成熟産業と言われて久しい繊維畑から社長が出たことは当時、“サプライズ人事”とも言われた。

岡藤氏は就任後、住友商事を抜いて業界3位になる目標を掲げた。それまで商社各社の業績を押し上げていた資源価格が下落する中、繊維や食料などの非資源事業の強化が奏功し、純利益で三菱商事、三井物産に次ぐ地位を占めることに成功した。米ドール・フード・カンパニーから一部事業を買収するなど伊藤忠の資源以外の事業拡大はさらに加速している。岡藤氏が三井物産を追い越す道筋を付けられるかどうか、注目が集まっている。

(PANA=写真)
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