総合商社が好調だ。2012年3月期の決算では、大手5社中三菱商事を除く4社が最高益を記録した。

要因の一つに資源高の影響がある。新興国の台頭を背景に、鉄鉱石や石油などの価格が上昇。生産量の増大も追い風となった。三井物産などが投資するロシアの資源開発事業「サハリンII」が2009年に本格稼働し、配当が業績に寄与し始めたことはその一例だ。

資源以外の分野についても、リーマンショック以降に投資した事業が利益を生み始めている。海外での発電所建設など、IPP(独立系発電事業者)事業も実りつつある。

今期、特に順調なのは丸紅だろう。08年に投資したチリの銅鉱山エスペランサが本格立ち上げに入るほか、中国向けの穀物取引の伸長、LNG船の収益貢献など、資源分野と非資源分野がバランスよく利益に貢献しそうだ。

伊藤忠は純利益ベースで住友商事を抜き、業界3位となった。岡藤正広社長は、前期達成した3000億円を今期も維持せよという大号令をかけている。同社の業績予想は保守的だが、3200億円程度の利益を出す可能性はある。

苦戦を強いられそうなのが三井物産だ。今期の純利益見通しは、前期比8%減の4000億円になると発表。最大の要因は資源価格の下落にある。同社は純利益の資源依存度が高く、伊藤忠や丸紅が5割程度であるのに対し、約9割もある。特に鉄鉱石の取り扱いが大きい。世界の鉄鉱石の6割を買い占める中国は、現在、経済の失速が懸念され、価格の弱含みが業績には重石だ。

各社が中長期的に成長を遂げるためには、3つの課題がある。

1つ目は非資源分野の拡大である。資源価格はボラティリティ(変動性)が高い。資源依存度は3~4割に抑え、インフラ事業など順調な利益拡大が見込める投資を拡充すべきだろう。

2つ目は“利益の質”の改善だ。各社の利益の多くは持分法適用会社が占める。商社の業績は純利益によって判断されるが、持分法適用会社を増やすことにより資産を抑えられるメリットがある一方、純利益の成長ほどキャッシュの利益が伸びない側面もある。

最後に収益構造の見直しが挙げられる。利益が好調な今こそ、膨らんだ資産を整理することが求められよう。

(構成=プレジデント編集部)
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