家年4月の貿易収支が4637億円の大幅赤字となった。2月、3月と黒字を続けていたのだから、その要因が東日本大震災にあることは間違いない。東北・東関東などの工場が被災し、部品供給が寸断された自動車や電機の輸出が一気に落ち込んだためだ。とりわけ自動車の4月実績は前年同月より67%も減ったという。
この状況を第一生命経済研究所主席エコノミストの熊野英生氏は「今回の赤字転落がリーマンショックのときと違っているのは、供給ショックの色彩が強い点だ。リーマンショックの際は米国市場などの在庫調整で、需要の急激な減退が生じ下げ幅が大きかった。しかし、今度はその作用がない分、振幅は小さい。生産が回復してくれば復元力も働く」と読む。
ただし、貿易赤字要因はこれだけではない。福島第一・第二や浜岡に象徴される原発の運転停止だ。電力需要を賄うには火力発電所の稼働を高めざるをえない。そのためにLNGを中心とした輸入燃料が増える。熊野氏の試算では、燃料輸入増が東京電力で年間プラス7000億円、中部電力でプラス2500億円程度だという。
だが地震発生から3カ月が経過し、復旧の手応えも出てきた。自動車各社の場合、日産自動車が6月に震災前の生産水準を回復、トヨタ自動車も8月には戻るとしている。このような動きを踏まえ、熊野氏は「4~6月はトータルで約1兆円の赤字だとしても、7月から9月で持ち直し、秋口からは黒字が定着する」と語っており、貿易赤字の期間は長引かずにすみそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)