この夏の電力不足に備え、扇風機が売れている。なかでも消費者の人気を集めているのが2万~3万円台という価格帯の高級機種だ。調査会社のGfKジャパンによると、主要家電量販店における今年5月の販売数量は前年同月の約4.5倍に達した。ずっとエアコンに押され一時は撤退も言われていた扇風機だが、時ならぬブームにメーカー各社も増産体制で臨んでいる。
市場急伸の背景を、家電コンシェルジュの神原サリーさんは「昨年、ダイソンやベンチャー企業のバルミューダから、高級扇風機分野の画期的な製品が発売されたことが引き金になっていると思います。今年に入って風の質やコストパフォーマンスがアップし、市場を牽引する主役になりました。そこに節電意識の高まりがぴったりと重なったわけです」と話す。
量販店の店頭で安く販売されている機種との違いは「モーターの回転数を制御するインバーター機能を搭載し、羽根の枚数や構造を工夫しているため、自然に近い風を感じられること」(神原さん)。微風モード使用時の消費電力を3Wに抑えた商品も登場した。これらとエアコンを上手に併用すれば節電効果も高くなる。
ただ今年は市場の立ち上がりが早かっただけに、高級機種に関してはすでに売り切れや品薄感が出始めている。とはいえ、夏本番はこれから。神原さんも「暑さの到来によって、在庫製品を中心にもうひとつの大きなピークが来そう」と見ている。この“扇風機の復権”が夏のライフスタイルとして定着しそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)