日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

世界で信頼できる相手を探し、見抜く目

明治ホールディングスは、ミルクからお菓子、健康食品、医薬品、最後は介護食品まで、いわば、赤ちゃんからお年寄りまで全世代型の商品を扱う珍しい会社だ。乳業、製菓を統合再編した浅野茂太郎前社長は「今まで働いてきて信頼できる人物」と評価。本人曰く、非常に単純、自然体で物事に接するタイプ。菓子部門を皮切りに、国際、生産、経営企画、営業などほぼすべての部門を管轄した数少ないキャリアの持ち主だ。

明治ホールディングス代表取締役社長 松尾正彦氏
―― 一番長かった部署はどこか。

【松尾】国際部門だ。海外で事業開発や生産工場を立ち上げてきた。どちらかというと、プロジェクト屋だ。海外では、何度も手痛い目に遭った。40代前半、中国で合弁会社を立ち上げて、お金を送金して、行ってみたらパートナーが雲隠れしていたり。あるときは大きなプロジェクトで、ほぼ最終段階まで詰めたときに、向こうの経営陣の交代でボツにされた。苦い経験ばかりを思い出す。

――海外でプロジェクトを立ち上げるときの要点とは何か。

【松尾】海外でパートナーを選ぶ場合は会社や経営者の信頼性が一番。人間を見ることが必要だ。それがあれば、立ち上がりが悪くても、取り戻すことができる。

――2009年、経営統合したが、その前準備の段階から、統合の仕事に関わっている。

【松尾】統合の難しさは、乳業と製菓の違い、医薬品とお菓子という業態の違いもあった。だが、違いがあるという前提に立てば、そう深刻に考えることはない。ただ、一部がこうでなければいけないと言えば、難しい話になる。だからこそ、違いを前提にしないといけない。今は、その違いを乗り越えたところで、結果を出していくのはこれからだ。