日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。
上司から「頑固者」と呼ばれたエース
みずほ銀行の信頼回復と国内営業の強化──。国際派のエースでもある林信秀新頭取が、当面取り組むべき課題はこの2点に絞られる。昨年9月に融資問題が表面化した反社会的勢力と訣別。2002年の3行統合以降に進めた効率化と人員のスリム化で、弱まっている営業店の強化も急務だ。
――11月に新頭取就任を打診されたときの思いと決意は?
【林】行政処分の関係で行内が揺れていた時期だけに驚いた。けれども、佐藤康博前頭取(みずほフィナンシャルグループ社長)がけじめをつけたことは重い。それだけに「後任に任せたい」との言葉を、人間として男として真正面から受け止め、覚悟を決めた。
――佐藤社長の直属の部下だったこともあったとか?
【林】実は、佐藤社長が02年にみずほコーポレート銀行の国際企画部長を務めた時代、それを支える立場の次長職に就いていた。システム障害も影響し、海外事業は大苦戦。立て直しに向け丁々発止の議論をやり合い、佐藤社長からは「頑固者」と呼ばれたことを記憶している。
――国際業務が長いようだが。
【林】米国と香港に合わせて約13年駐在した。入行5年目でニューヨークに赴任。日系企業との付き合いは、銀行の看板が後ろ盾になってくれることもあるが、非日系企業だとそうはいかない。「あなた個人の付加価値は何で、どんなメリットをもたらしてくれるのか」が問われた。
それは香港でも同じ。財閥トップと直に会えるのだが、彼らは自社が直面している経営課題などについて一切話してくれない。だから私は、先方の財務状況などから潜在ニーズを読み取り、日本企業とのビジネスマッチングや、多様なファイナンス手法について積極的に提案した。