グループ企業が6社に及ぶみずほフィナンシャルグループ。その全人材3万4000人を最大限活かす人事制度とはどのようなものなのか。経営統合後の社員の求心力を高めるヒントもそこに隠されている。
グループ6社共通の人事制度構築で人材交流を活性化
M&Aによる経営統合の最大のリスクは人的資源の再構築であるといってもいいだろう。企業文化や価値観が異なる社員が一緒に机を並べて仕事する以上、問題が発生しないはずはない。人的融合がうまくいかなければ社員の既得権争いの激化や優秀社員の流出といった障害を招くことになる。
過去の経営統合ではこうした障害を回避するために旧社の人事制度を並立し、タスキ掛け人事やクロス人事の実施。あるいは近年では持ち株会社体制を敷いて旧社の事業子会社化による人事処遇制度の温存という手法も見られた。しかし、こうしたやり方では人的資源の活用という統合効果はとうてい望むべくもない。
統合後の最大の課題は真っ二つに割れている社員の求心力の一元化であり、人的融合のシナジー効果を発揮するための人材マネジメントシステムの再構築である。その観点では持ち株会社体制を敷くみずほフィナンシャルグループの仕組みは極めてユニークな存在といえるだろう。
おもなグループ企業には持ち株会社をはじめ、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ証券、みずほ信託銀行、みずほ情報総研の6社があるが、最大の特徴は人事制度のフレームワークを共通化した「プラットフォーム」を構築している点だ。具体的には社員の健康保険、企業年金制度などをグループ共通にしているほか、給与体系などの人事制度もまったく同じ仕組みを共有している。
たとえば月例給は年功色を払拭し、携わる職務内容で決まる職務給と成果加算給で構成される。グループ企業の職務内容を分析し、共通の職務レベルを1~15段階に格付けした職務等級制度を導入。職務給は単一賃金であり、仮に3等級の社員の職務給が30万円であれば、どの企業でも3等級であれば同じ30万円となる。ただし、賞与は個々の企業業績や業態に合わせた評価方法によって異なり、好業績企業とそうでない企業では当然原資の配分も違ってくる。
給与は共通、賞与は個別という考え方は「評価」でも貫かれている。人事制度の根幹をなす人事ビジョンとして「人材投資のROE」を掲げる。ROEとはResponsibility=自主性と自己責任原則、Opportunity=公正な機会の提供、Employability=市場競争力のある専門性の追求であり、ROEを高めることで魅力に富んだ働きがいのある環境を目指している。そして単に言挙げするだけではなく、ビジョンを具体的な行動レベルに落とし込んだのがグループ共通の評価軸だ。