評価軸は(1)お客様第一の徹底(2)変革への挑戦意欲(3)合理的で公正な活動(4)スピードの重視(5)主体的で責任ある行動──の5つであり、グループの全社員が5項目に即して評価される。

「これらは社員の行動面の人事評価の基盤である。各社ごとにビジネス内容や経験、スキルは違うし、達成すべき成果は異なるが、人事部やマネジメントの評価の考え方は統一する必要があり、共通評価軸という横串を通すことによってビジョンの実現を目指している」(みずほフィナンシャルグループ・倉中伸人事部長)

共通の制度はグループの一体感を醸成するのが目的であるが、その具体的効果といえるのが「転籍異動」と呼ぶ企業間の自由な異動である。異なる会社へ移る場合、通常は出向もしくは退職再雇用という形をとらざるをえないが、人事制度や退職金制度が同じであるため処遇が変わることはない。あたかも部署を変わるかのごとく容易に異動させることで人材交流によるシナジー効果やグループ全体の人材の最適配置が可能になる。同社の前田晃伸社長は、まさにこの柔軟なグループ会社体制の仕組みこそ「みずほのビジョンにほかならない」と自負する。

もちろん会社にとってのメリットだけではない。「個々の社員にとってスキルの形成という点においても、一つの銀行という組織で修得するだけにとどまらず、金融という広い世界で多様なスキルを身につけるチャンスを提供することもできる」(倉中人事部長)。