仕事帰りに同僚と居酒屋で1杯。お開きとなり、支払いはワリカンで幹事役のあなたはスマートフォンを取り出し、電卓機能を使い始める。今日のメンバーは、自分を含めて男性3人、女性2人の計5人。会計は27,730円で、まずは単純に頭割りすると「27,730÷5=5,546円」。「でも、女性は少し安くしてあげたいから、1人5,000円とすると……」と考え始めた途端に頭の中がこんがらがってくる。
これはワリカンの最もカッコ悪い計算方法。「スマホでスマートに」のはずが、ぜんぜんスマートじゃない。私はワリカンの計算にスマホも電卓も不要と思っている。
では、もっとスマートに計算するポイントは何かというと「ざっくり思考」だ。今回の場合、まず代金を「ざっくり30,000円」と考える。そして「30,000÷5=6,000円」で1人当たりのおおよその金額を出し、それから女性の金額を調整する。「30,000-27,730=2,270円」が実際との差額なので、女性に1,000円ずつ戻し、残り270円は幹事が預かって、後日メンバーに缶コーヒーでもご馳走したらよい。
ビジネスで本当に必要な「数字力」とは、実はこうしたざっくり思考をベースにしたものなのだ。それを身に付けるためには、中学・高校の数学の考え方、つまり「正確な数字」「きちんとした正解」を出すという「学校数学」から抜け出さなくてはならない。
私は企業研修で「1台のダンプカーの荷台に最大積めるゴルフボール数は約5万個が妥当か否かを判断せよ」という問題を出すことがある。すると、ダンプカーやゴルフボールの寸法を教えてくれと質問をしてくる方が必ずいる。
しかし、ここで求めているのは、何個積めるのかという「正解」を出すことではなく、主張の正誤を判断すること。つまり、数字をざっくりと捉えることなのだ。
ダンプの荷台という大きな「箱」で考えるからイメージしにくいわけで、私ならもっと小さい「箱」、たとえば「みかん箱」だとして、そこに12個入りのゴルフボールのケースが、縦2つ、横5つ、それが10段で、ざっと「2×5×10=100ケース」入ると推察する。
次に、そのみかん箱をダンプカーの荷台に、縦20、横5箱ずつ並べられそうなら、1段分だけで「20×5=100箱」。それだけでもゴルフボールの数は「12×100×100=120,000個」になり、最大5万個は疑わしいとすぐに推定できる。
ビジネスでは、手元に正確な数字がなくても、ざっくり捉えて仕事を進めなければならない場面が多々ある。ワリカンの話も同じこと。学生時代のクセでいきなり細かい数字を追い始めたら、何よりスマートではないだろう。