サッカーのワールドカップ・ブラジル大会で、日本チームは残念ながら1次リーグで敗退したが、日本中を大いに盛り上げてくれた。日本戦の視聴率はビデオリサーチの調査(関東地区)によると、初戦の対コートジボワール戦が最も高くて46.6%。W杯日本戦の過去最高視聴率の66.1%(2002年の日韓大会・対ロシア戦)には及ばなかったが、昨夏の大ヒットドラマ「半沢直樹」最終回の視聴率である42.2%なみだったことからも、W杯の人気ぶりがうかがえる。
ところで、視聴率が46.6%だったのなら、日本人の46.6%もの人々がテレビで観戦したと思うかもしれない。しかし、そうとは限らない。視聴率には統計上の“誤差”があるからだ。
視聴率とは、一般にテレビ保有世帯のうち、どのくらいの世帯がその番組にチャンネルを合わせていたかという「世帯視聴率」を指す。ビデオリサーチの関東地区での調査では、無作為に選んだ600世帯にモニターになってもらい、視聴の状況を調べている。つまり、視聴率46.6%というのは、600世帯のうちの279.6世帯に過ぎない。こうした調査法を、統計学では「標本調査」と呼ぶ。母集団の中から一部のサンプルを抜き出して調査し、その結果から母集団全体の状況を推測するというやり方だ。
サンプルが少ないということは、当然、誤差をともなうことが推察される。ビデオリサーチもその点を認め、標本数600世帯で視聴率が40%の場合、誤差の率が「±4.0%」生じるとしている。つまり、コートジボワール戦の視聴率は、50.6%だったかもしれないし、42.6%だったかもしれないのだ。
調査対象のサンプル数が多くなるほど、誤差は小さくなる。日本の全居住者を対象とする国勢調査のような「全数調査」であれば、誤差は生じない。その半面、調査対象が大きいと、調査のコストも手間もかかるので実施が難しい。要はどの範囲の誤差までなら許容できるかがポイントで、今回の視聴率の600世帯という調査対象であっても、「実態と違う」と目くじらを立てる人はまずいないだろう。
読者の皆さんの会社でも、アンケート調査を行うことがあるはず。同じように限られた予算の中で、どれくらいの人を調査対象にするのか、つまりどれくらいの誤差なら許容できるのかを事前に検討しておくことが重要になる。
その際に覚えておきたい超カンタン数式が「誤差=調査対象の平方根」。たとえば、調査対象が100ならその平方根(=ルート100 )は「10の2乗=100」なので10。調査対象100に対して誤差が10なら、その誤差の率は10%にも上り、「これでは……」となるだろう。
最近の電卓は「ルート」のキーが付いたものも多く、すぐに計算ができる。ちなみに「ルート600」を叩くと、「24.49……」が出てくる。その600に対する100分率を求めると「4.08……」となり、ビデオリサーチが認めている誤差の率とほぼ一致する。