著者の中村由美さんはカレーハウスCoCo壱番屋の創業社長をはじめ、3代の経営者に仕えた。秘書生活20年以上、ベスト・セクレタリーにも選ばれた。秘書として、いちばんの褒め言葉は上司やお客さまから『ありがとう』と言われること。私は長年、この言葉のために働いてきました。
本書は抽象的な仕事哲学を書いたものではない。「雨の日の来客にタオルを差し出す」「新幹線で上司の隣に座らない」といったプロ秘書の日々の心得をまとめたものだ。
「秘書の仕事はまさにディテールで、細かい心遣いができるかどうかが重要なのです。また、もうひとつ考えていなくてはならないのは自分の身を律すること。はた目からは『秘書はおいしい仕事』と思われています。社長と高級料理を食べたり、海外出張に同行したり……。現実は違うのですが、他人はうらやましい仕事だと考えています。秘書はそのことを頭に置いておくこと。毎日、派手な服を着たりしてはいけないのです」
確かに、中村さんの服装は派手ではなく、かといって地味でもない。節度のある服装である。
「秘書の仕事はおもてなしです。お客さまにリラックスしていただいて、同時に上司を満足させる。かといって、完璧な秘書を目指す必要はありません。それよりも、ポカをやったり、上司に怒られるような人間味のある秘書がいい。ちょっと可愛いところがあるほうがいいんです」
また、彼女は「秘書だけに向けて出した本ではない」と。
「私は、お客さまにヨイショするよりも、さりげない気配りや心遣いが大切と書きました。それは営業マンにも通ずること」
彼女はいまも秘書をしている。壱番屋の創業者が講演活動をする際の日程調整、出張の手配は彼女の役割だ。
「コンサルタントやコメンテーターにならないかと誘われたこともあるのですが、きっぱり、お断りしました。私が好きなのは秘書の仕事ですから、死ぬまでやっていきたい」