建て替え未定のまま約10年使い直す
そこで野村不動産が選んだのは、営業する範囲と期間を限り、既存建物を使い直す方法だった。再開するのは低層部の一部と駐車場などで、レストラン棟とオフィス棟は対象に含まれない。施設全体の営業が戻るわけではない。
同社は、設備の老朽化や不具合を踏まえ、再開する範囲を限ったと説明している。営業面積が小さくなることだけで、買い物客の需要が減ったための縮小だとは判断できない。設備の状態が、営業を再開できる範囲を制約している。
一方、習志野市は文化ホールを別途改修し、2028年度中に再開する予定だ。ただ、2026年8月の豪雨でホールに浸水などの被害が出ており、市は詳しい状況を調べている。商業部分とホールは、改修を担う主体も再開予定の時期も異なる。
野村不動産は再開発を取りやめる意思はないとしている。ただし、「約10年」は既存建物で営業する期間の目安だ。その期間が終われば建て替えが始まると決まっているわけではない。
「津田沼まで出かける理由」をどう作るか
髙島屋とダイエーを核に開業したこの建物は、入居する店が替わりながら、約半世紀にわたって使われてきた。その間、周囲には住宅地が広がったが、店主たちは、遠くから客を呼び込み、駅前で長く過ごしてもらう難しさを語る。
かつて南口の道路に車列が延びたのは、ダイエーの優勝セールを目当てに、多くの人が訪れたからだった。駅に近いという便利さに加えて、そこへ出かけたいと思わせる店や催しがあった。施設が買い物の目的地となることで、その周囲にも人や車の流れを生んでいたのである。
いまも駅前という便利な立地は変わらない。しかし、ラ・シェールの店主が指摘するように、周辺には大型商業施設が増え、車で買い物に行く選択肢も広がった。近くに住む人の日々の買い物に応えることと、遠くの人にも津田沼まで足を運んでもらうことは、同じではない。駅前に建物があるだけでは、数ある行き先のなかから選んでもらえるとは限らない。
大塚さんの「暮らすにはいいんだけど、1日は過ごせない」という言葉も、生活の便利さだけでは満たせない需要があることを示している。買い物に加え、食事や催しなどを楽しみながら時間を過ごせる場所を、どうつくるか。かつて大型店が担っていた、街へ出かける理由をつくる役割が、改めて問われている。


