「ダブルケア」とは、子育てと介護が同時期に発生する状態をいう。2016年の内閣府の調査では、ダブルケア人口は25万人。そのうち女性が17万人。30〜40代が約8割だった。30〜40代といえば働き盛りだ。働きながらダブルケアをする人の割合は、30代で4割以上、40代で6割という調査もある。
本連載は、2019年にダブルケアを経験し、父親を亡くしてから現在まで、100事例以上の介護者に取材を重ねてきた旦木瑞穂氏による取材を通して、ダブルケアに備える方法や乗り越えるヒントを探る。
突然母親が「動けない。歩けない」
関東在住の榎木鹿子さん(仮名・50代)は35歳で結婚した。その直後に外食産業に勤める夫が遠方に転勤(単身赴任)となってしまったため、妊娠し、産休に入ると、実家で暮らすことにした。
かわいい孫の顔を見た両親から「できれば(このまま実家で)ずっと一緒に暮らしたい」と言われたため、夫の単身赴任が終わっても同居し続けることを決めた。二世帯同居そのものは何の問題もなかったが、十数年後の2022年の7月に異変が起こった。
当時77歳の母親が朝起きてこないのだ。寝室へ見に行くと、目覚めているものの、布団に横たわったまま「動けない。歩けない」と言う。
同居を始めて以降、母親は多くの病気に罹患した。65歳頃には脊柱管狭窄症で手術入院。71歳頃には心臓弁膜症の手術、75歳頃には心不全を立て続けに起こし、仕事を退職していた。退職後、母親はほとんど家から出ずにゆったりとした生活を送ったにもかかわらず、腰痛や息切れを訴えていた。
「これはおかしい」と思った榎木さんが119番に連絡したが、「緊急性は低いと思われ、救急車ではどこの病院へ搬送されるかわからないため、かかりつけ医があるなら、介護タクシーを使ったほうが良い」と勧められる。
その通りにすると、かかりつけ医で「化膿性脊椎炎」と診断され、半年間入院することになった。
入院中に初めて要介護認定調査を受けたところ、なんと最も状態が深刻な「要介護5」。半年後、退院した母親は、もはや以前のように歩くことはできない状態だった。
母親が前期高齢者(65歳)入りした頃から立て続けに入院や手術が必要な状態になったのはなぜだったのか。それは、両親が結婚して、榎木さんを育てていた時期を含む「暗黒の30年間」に深く起因していたのだった――。

