安川電機の減益を、そのまま競争力低下と読むか
同じFA株でも、安川電機の事情は異なる。2026年3~5月期の売上収益は前年同期比10.6%増の約1390億円だったが、営業利益は19.2%減の約85億円だった。ファナックとは対象月も違い、両社をまとめて「増収増益」と扱うことはできない。
安川電機は、基幹業務システムの切り替えによる生産への影響などを25億円、欧州の構造改革費用を10億円と説明している。これらを除いた営業利益は約120億円になるというのが会社側の見方だ。実際の利益は85億円である一方、一時要因が解消すれば回復し得る部分もある。
一時要因という説明が正しければ、次の決算で生産と採算は改善するはずだ。受注が増えているのに納期が戻らず、費用も残るなら、見方を変える必要がある。微積分思考では、会社の説明を「次に何が起きれば確かめられるか」という観察項目に変える。
中国勢の強さは、成長率の高さだけに表れない
中期の競争を見るうえで外せないのが、中国の匯川技術、イノバンス・テクノロジーだ。同社の香港取引所向け申請資料では、売上高は2023年の約304億元から2024年に約370億元、2025年に約451億元へ増えている。両年の増収率は、ともに約22%である。成長率はほぼ横ばいでも、売上増加額は約66億元から約81億元へ拡大した。一定の成長率が続くと、事業規模が大きくなるにつれて毎年積み増す金額も大きくなる。競合が追うべき相手は、前年と同じ大きさの会社ではない。
ただし、2025年の同社の売上高には、新エネルギー車向けの駆動システムなどが約45%含まれる。全社売上をそのまま日本のFA事業と比べれば、競争の範囲を取り違える。また、2026年上期は約20%の増収に対し、親会社株主に帰属する純利益は約5%減った。中国企業も、売上の伸びを利益へ変える難しさを抱えている。
EVで使うモーターや制御技術と、工場の自動化が一社の中で結びつくことには意味がある。技術者、部品、量産の経験を別の用途へ移せれば、投資の成果を複数の市場で回収できる。
ただし、技術を複数の事業に展開できても、得られる利益の厚みは異なる。同じ申請資料に示された2025年の粗利率は、産業自動化・デジタル化事業の40.1%に対し、新エネルギー車向け駆動システムは14.5%だった。蓄積した能力をどこへ振り向けるかが、成長と採算の両方を左右する。どの能力が、どの事業の収益へ結びついているのか。「蓄積」のレンズを向ける先は、ここだ。

