一度立ち止まって考えてみよう
明確な統計的な効果が見られないことは、AIが無力だという意味では全くない。おそらくは、本稿が整理した三つの壁、もしくは他の壁のどこかで止まっている可能性が高い。
だとすれば、多くの企業が追いかけているAI活用や普及指標は、そもそも的を外している。測るべきは、どれだけ使ったかではなく、削った時間がどこへ行ったのか。自社にとっての付加価値をどう増やしたのか。これらの本質的な指標について本気で考えないかぎり、利用率が100%になっても、AI投資効果は「なかった」という結論が導き出されてしまう。
AIもまた、これまでのテクノロジーと同様に、「技術の導入」だけでなく、「業務プロセスの見直し」「マネジメントの調整」「組織構造の変更」「人材育成」などの補完的なソフトな領域への投資が必要だということだろう。
残業時間も人も減らず、売上が上がっていないように見えるにも関わらず、各社のAI投資は止まりそうにない。1年後、2年後にそれがどうなっているのかは、普及の足を止めてでも考えられるべき本質的課題である。


