総労働時間は減っているのは「働き方改革」の成果

まず日本の労働時間を追おう。

総務省「労働力調査」で正規従業員の週間就業時間を見ると、長時間就業は着実に減っている。しかし、最大の減少は2019年から2020年のコロナ禍であり、生成AIが普及し始めた2022年からのトレンドは微減トレンドが続いている状況だ。また、この2022年から2025年平均にかけて、正規の職員・従業員は約111万人増加していることも見逃せない。

2024年からは週49時間以上の労働者の減少幅が大きくなっているが、この時期は時間外労働の上限規制の全面適用にあたり、働き方改革のトレンドの延長線上にあると見たほうが妥当だろう。

【図表1】正規従業員の週間就業時間別割合の推移
出所=総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均結果」より筆者作成

厚生労働省「毎月勤労統計調査」を見ると、2025年度は前年度比1.0%減だったが、2026年に入ってからは増加に転じている。

【図表2】一般労働者の総実労働時間・前年比推移
出所=厚生労働省「毎月勤労統計調査2026(令和8)年4月分結果」より筆者作成

「AI先進国」アメリカで労働時間は増えている

では、日本よりもAI普及が進んでいるアメリカはどうか。

米国労働統計局(BLS)の雇用統計によれば、民間部門の週平均労働時間は2021年1月に35.0時間のピークをつけたあと緩やかに低下したが、2025年半ばの34.2時間で底を打ち、2026年は1月から7月まで34.3時間で横ばいに転じている。生成AIが最も激しく普及したこの2年間、米国の労働時間は減るどころか、わずかに増えている。

業種別に見ても、AIの痕跡は見当たらない。AI利用が最も進む3分野で見ると、情報分野は2025年7月の37.1時間から2026年7月も37.1時間で変化なし、金融は37.6時間から37.4時間、専門・ビジネスサービスは36.4時間から36.7時間である。いずれも0.3時間以内の動きにすぎず、週に換算して20分に満たない差である。ちなみに、失業率も大きな変動はなく、横ばい圏内で推移している(※1)。ニュースが派手に報じるようなビッグテックのレイオフなどは、マクロ・レベルでは起きていない。

日米いずれにおいても、AIが人間の時間を取り戻したという痕跡は、統計上には現われているとは言い難い。

※1 U.S. Bureau of Labor Statistics, “The Employment Situation ― July 2026,”