定時で帰れる人と帰れない人は、何が違うのか。周囲から“気が利く”と評価される働き方こそが、負担を増やす原因だという。日本能率協会マネジメントセンター(編)『なぜか余裕がある人のやらない技術』から、仕事を抱え込まないための基準を紹介する――。(第2回)
悩まされるビジネスマン
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「相手の感情に合わせて」動かなくていい

相手が感情的な口調で話してきたとき、必要以上に急いで対応したり、引き受けるつもりのなかった仕事まで抱えたりしてしまった経験はないでしょうか。相手の感情に合わせて動くほど、仕事は増えていきます。あとから振り返ると、「そこまでやる必要はなかった」と感じるのに、相手の感情に押されて動いてしまう場面は少なくありません。

怒りや焦り、不安といった強い感情に触れると、それを和らげようとするのは自然な反応です。相手を気遣うことも大切ですが、その場の感情に引きずられると、本来の役割や優先順位よりも、「相手に配慮すること」が先に来てしまいます。その結果、必要以上の対応を引き受ける流れが生まれます。

たとえば、取引先が強い口調で「早く対応してほしい」と伝えてきた場合。

本来であれば、優先順位やスケジュールを確認してから調整すべき内容でも、相手の焦りに引っ張られて、すぐに対応を約束してしまうことがあります。その結果、ほかの業務を後回しにすることになり、全体の進行は崩れます。相手の感情に応じた判断は、別の負担を生んでいるのです。

社内でも同じです。上司が苛立っている様子を見て、「とにかく早く終わらせよう」と無理なスケジュールで作業を進める。あるいは、同僚が不安そうにしているのを見て、本来は分担すべき業務まで引き受けてしまう。どちらもその場では関係を保てているように見えますが、役割の境界が曖昧になり、自分の負荷が積み重なっていきます。

「配慮ができる人」ほど、負荷が増え続ける

日常的にやり取りがある相手ほど、感情の変化に気づきやすく、影響されやすくもなります。また、上下関係がある場合は、相手の感情に逆らいにくいものです。しかし、「相手の感情に応じる」という選択を優先していると、本来の役割を超えた対応が常態化していきます。

相手の感情に敏感に反応し、場を収めることは「配慮ができている」「気が利く」と評価されることもあるかもしれません。しかし実際には、外部の基準によって、自分の役割や優先順位が後回しになり、負荷が増え続けていくのです。

ここで必要になるのは、「相手の感情」と「自分の責任」を切り分けることです。相手が怒っている、焦っている――その事実は受け止めつつも、それに応じて自分の判断まで変える必要があるのかを見極めます。たとえば、「急ぎたい意図は理解しました。ただ、現状の優先順位ではこの時間になります」と、否定せずに感情を受け止めれば、関係を崩さずに負担を抑えることができます。

意識すべきは、相手の感情に巻き込まれず、適度な距離を保つことです。相手の感情に反応して動くのではなく、役割と優先順位に基づいて行動を選ぶと、仕事の量と質は安定していきます。

POINT
・相手の感情に流されるほど負担が増える
・自分の責任と相手の感情を切り分ける