円安トレンドを変えた米財務長官

2021年の年初以降、つい最近まで外為市場で円は独歩安の状況だった。2021年1月4日、1ドル=103円程度の水準にあった。その後、米国や欧州での利上げが進む一方、日本銀行の金融政策正常化が遅れ、わが国と欧米諸国との金利差が広がった。それに加えて、財政悪化やインフレの懸念が折り重なり円は6割近く下落した。

ところが、ここにきて、円安トレンドが転換するのではないかとの観測が出始めた。きっかけの一つには、日米の協調介入に加えて、米国のスコット・ベッセント財務長官の円高を後押しする発言があった。

昨年夏場ごろから、同氏は円安を抑止する発言をしていたが、最近、そのニュアンスが一段と強まった。特に、足元での同氏の円安抑止姿勢は、かなり踏み込んでいる。同氏は、もともとファンドマネジャーだったこともあり、投資家もその発言を全く無視することはできない。

日本の金融緩和、積極財政に「NO」

一部報道によると、ベッセント財務長官は、高市政権の積極財政の修正を迫ったと言われている。これまで、高市政権はインフレ環境下でも緩和的な金融政策と、積極的な財政政策を重視する経済運営をするとしてきた。ベッセント氏は、そうした政策を見直して、円安に歯止めを掛けることを促しているようだ。

沖縄県知事選に関し、記者団の取材に応じる高市首相=2026年9月14日午前、首相官邸
写真提供=共同通信社
沖縄県知事選に関し、記者団の取材に応じる高市首相=2026年9月14日午前、首相官邸

ベッセント氏は、投機筋などに対して「円を売るな」とまで警告した。同氏の強力な姿勢に影響され、ひとまず行き過ぎた円安は止まったように見える。それでも、過去の為替レートと比較すると円は依然として割安の状況だ。

本格的な円高への転換には、日米の金利差の縮小が必要になるだろう。そのためには、日銀の円滑な金利引き上げも重要なファクターだ。また、わが国のインフレ懸念の低下、高市政策の修正による財政悪化懸念の払拭等も重要になる。

これらの条件を満たすためには、まだ、もう少し時間がかかるかもしれない。ただ、ベッセント財務長官の円安阻止の姿勢は、相応の効果があることは間違いない。