円安転換の要因はまだ解消されていない
一連のベッセント財務長官の発言等により、とりあえず、1ドル=160円台のような極端な円安は止まったように見える。今後、ベッセント氏がより強硬に円売りを制限するような発言を繰り出し、円が追加的に買い戻されることもあるかもしれない。
ただ、これで、本格的な円高トレンドへ転換するかは慎重な検討が必要だろう。過去の円相場を振り返ると、やはり米国の景気減速懸念が高まって、米国の利下げ予想が出てくることが円高転換の要件の一つだったケースが多い。
現在の米国経済は、何とか底堅さを保っている。低所得層の家計債務の増加など懸念はあるものの、全体として労働市場の改善を支えに個人消費はそれなりの状態を保っている。
AI関連のデータセンター投資も旺盛だ。資金需要がすぐに減少することは考えにくいだろう。また、イラン戦争の影響もあり、米国における物価上昇への警戒感も高まっている。FRBとして、利上げを再開し金融を引き締めることも考えられる。わが国の金融政策の正常化ペースにもよるが、日米の金利差はなかなか縮小しづらい状況が続くと予想される。
「本格的な円高」はいつ訪れるのか
日本国内の要因にも注意が必要だ。昨年10月以降、1ドル=150円台から160円台前半までの円の下落は、高市政策に影響された側面が大きい。ベッセント氏の発言をもってしてもドル/円は高市政権発足前の水準には戻らなかった。
大手投資家は、円安重視・拡張的・緩和的な財政金融政策を重視する、高市政策はまだ続くと予想している。日銀の利上げペースが加速するとの観測もあるものの、コストプッシュ型のインフレに利上げで対応することは容易ではない。
米金利の低下予想の増加、日本の本格的な経済政策の修正、それらの実現には時間がかかりそうだ。今回の円相場の動きが、すぐに本格的な円高につながるとみるのはやや早計だろう。ベッセント財務長官の発言などが続くと、当面、円は強含み持合いの展開になるだろうが、一挙に円高傾向が進むことは考えにくい。
現在の日米の経済状況が続く場合、とりあえず、一定のレンジ内でのもみ合いの展開が続くことになりそうだ。ただ、日銀の利上げが予想通り実施されると、少しずつ円高方向に進む可能性があるはずだ。
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