円売り材料を提供し続けた高市首相

2021年の年初に今回の円安相場は始まった。当時の為替レートは、1ドル=103円前後だった。そこから、異次元緩和を重視したアベノミクスもあり、円安トレンドが進行した。

日銀の金融緩和観測を背景に、日米の金利差は拡大した。大手の投資家は円資金を調達し、それを金利の高いドルに換えてドルで運用する、いわゆる円キャリートレードを増やした。

その後、米国の景気減速懸念が出たこともあり、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が増えると、ドルの上値は重くなってきた。そこに、日米の協調介入が出た。介入の効果は長続きしなかったものの、さらに、ベッセント財務長官の円安阻止の強い姿勢と、それを裏打ちする発言が出た。

2021年初からの円安トレンドは、過去と比較してもかなり急速に進んだ。特に、昨年10月の高市政権の発足後は円売りが急増した。

高市首相は当初、円安を歓迎するともとれる発言を行ったこともある。それは円売り材料だ。さらに、首相はインフレが進む経済環境の中で、財源を明確にしないまま補助金の支給や減税策を打ち出した。これは、財政の悪化懸念を高める。財政出動の拡大で、物価もさらに上昇する。

通貨レート掲示板
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1ドル=164円、40年ぶりの水準に

しかも、首相は日銀に対して、緩和的な金融政策を運営するよう要請をしたともいわれている。その結果、外為市場では、ドルやユーロを買い、円を売る投資家が増えた。高市政権発足後、円安傾向は、内外の金利差などで説明することが難しいほど進んだ。

今年7月下旬、一時1ドル=164円目前まで円は売られた。約40年ぶりの円安水準だ。円安は輸入物価の上昇につながり、インフレ懸念を高める。それを反映して国内の長期金利が上昇すると、世界的に金利上昇傾向を加速することにもつながりかねない。

そうした展開を食い止めるためにも、7月下旬以降、日米は協調して為替介入を実施した。8月第1週、1ドル=155円台前半まで円は買い戻された。ただ、協調介入の効果は長続きしなかった。8月中旬には、1ドル=159円台、後半には160円台まで売り戻された。

しかし、永久に円が下落し続けることは考えづらい。8月下旬、一部の投資家は過去の経験則から、そろそろ相場に反転の兆しを意識し始めたようだ。